音楽

フェラーラ・アンサンブル「美徳の華」

中世音楽のCDも10枚を超えたが、じっさいのところ「これはすごい」と思ったのはそんなに多くない。そんななかで1枚だけあげるとすれば、ウエルガス・アンサンブルの「フェビュスよ、すすめ」(ソニー・クラシカル)になるだろうか。これは演奏、選曲と…

ブクステフーデ「オルガン曲全集」

ブクステフーデといえば、バッハ伝のたぐいには必ず出てくる名前だが、恥ずかしながらいままで聴いたことがなかった。今回(といってもだいぶ前だが)Scarboさんの紹介があったので、それを購入してみた(BUXTEHUDE: Complete Organ Music, Walter Kraft, Vo…

グリーク「山の娘」

franzさんのところ(「歌曲雑感」)で紹介されていたので興味をもって購入("GRIEG: PEER GYNT, PIANO CONCERTO etc.", EMI)。シーヴ・ヴェンベルイという歌手は名前も知らなかったが、首すじがぞくぞくするような美声の洪水に完全にノックアウトされてしま…

ラヴェル「歌曲集」

エリー・アメリンクとルドルフ・ヤンセンがエラートに吹き込んだもの(1985年録音)。これは某老舗サイト(ドビュッシー、ラヴェル関連の)でぼろくそに叩かれていたので、あまり期待もしなかったが、じっさい聴いてみるとじつにすばらしい。いったいこ…

ショスタコーヴィチ「交響曲第10番」

ベルリンフィルの名演ということでcomcさんに薦めてもらったもの(カラヤン&ベルリンフィル、1966年録音、グラモフォン)。アマゾンで1000円で出ていたので飛びついたが、あとから考えてみると、この66年盤よりものちの81年盤のほうが音はよさ…

ブリュメル「12声のミサ曲」

Scarboさんの記事(http://d.hatena.ne.jp/Scarbo/20070314/p1)を読んで興味をもったもの。ファン・ネーヴェルとウエルガス・アンサンブルによる1990年の録音の再発(ソニークラシカル)。やはり興味の中心は12声をどう動かしているのかということだ…

「ハイドン歌曲集」

アメリンクとデムスによる録音(1980年、フィリップス)。アメリンクの歌をきくたびに、ボードレールの詩句を思い出す。「婀娜として おお たをやかの魔女、きみが若さを飾るくさぐさの色香をわれは語らむか、子供らしさと爛熟の融けて凝りたるきみが美を…

ジャック・ブルース「シングス・ウィ・ライク」

njkさんからジャック・ブルースの「シングス・ウィ・ライク」について書いてほしいというリクエストがあったので、この機会に少し書いておこう。このレコードと出会ったのは、二十代の終わりごろ、某中古屋でのことだ。マクラフリンが参加しているというので…

LPの思い出

思い出といっても、LPは子供の私には高くてなかなか買えなかった。だいたい近所のレンタル屋さんで借りてカセットに録音して聴いていたのが多い。だから家にあるLPも数は少なくて、LPラック1ケースにちょうどおさまるくらい。いまはCDしか聴かない…

「トルヴェールとトルバドゥール」

ハルモニア・ムンディのセンチュリーシリーズの一枚。内容がつまらないわけではけっしてないけれども、いざ感想を書こうとすると筆がすすまない。データ的なことを記すのはめんどくさいし(それにたぶんだれも読まない)、ブックレットの解説を紹介するほど…

60年代後半のポップス

ビートルズをBGMに使っているところ(食堂やレストランなど)はいまでも多いみたいだ。この前も別々の店でたてつづけに二度聞かされた。この息の長さをどう考えるか。彼らが解散してからすでに37年、その活動期間を考えると、ほぼ半世紀も昔の話だ。そ…

バルトーク「弦楽四重奏曲1番〜6番」

バルトークは音楽史上、バッハと並んで、いやある意味ではバッハ以上に「無敵の人」なのではないか。彼に対して発せられる批判の矢も、その多くは的をはずれるか、まれにあたってもことごとくはね返されてしまう。どんな辛辣な評言も、彼にあっては賛辞に変…

ルッツ・キルヒホーフ「魔女と錬金術師のためのリュート音楽」

ソニー・クラシカルの古楽部門(?)VIVARTEの1枚(2000年)。おもにバロック期のリュート音楽、それも舞曲を中心にあつめたもので、作曲者はアントニー・ホルボーン、ヨハン・ダニエル・ミリウス、ニコラ・ヴァレ、マテウス・ライマン、アタナシウス・…

「アルス・ノヴァの世紀」

去年、感想を書けなかったもう1枚がこれ。"LE SIECLE DE L'ARS NOVA" (HARMONIA MUNDI, CENTURY 6)前回、中世音楽に精神性はない、と書いたが、これはもちろん世俗音楽に関してのみいえることで、宗教音楽にはあてはまらない。精神性は霊性ともいわれ、ほん…

アッラ・フランチェスカ「愛の忠臣」

一年前からうすうす予感はしていたが、やはりモーツァルトをろくろく聴かないうちに2006年は終ってしまった。残念な気もするけれど、いっぽうでモーツァルトの呪縛から解放されたようなすがすがしさも感じる。だいたい、メモリアル・イヤーなんていうも…

「舞踏への勧誘〜クナッパーツブッシュ名演集」

この前ちょっと言及したが、あらためていちおう書いておく(DECCA, ユニバーサル・ミュージック)。これはクナッパーツブッシュがウィーンフィルを振ったもので、前に聴いたカラヤン&ベルリンフィルとは好対照をなしている。後者が関東ふうで洗練されている…

ゴシック・ヴォイセズ「知られざる恋人」

Gothic Voices "The Unknown Lover, Songs by Solage and Machaut" (Avie Records, 2006)ソラージュの歌曲を12曲、マショーの歌曲を7曲、交互に並べた作品集。歌っているのはゴシック・ヴォイセズというヴォーカル・グループで、全曲アカペラだ。このCD…

チャイコフスキー「3大バレエ組曲」

チャイコフスキーの「くるみ割り人形」は子供のころからのフェヴァリットだった。しかし、長いこと手持ちのディスクがなかったので、数年前、ビゼーの曲とカップリングになった廉価盤を買ってみた。で、それを最近とりだして聴きなおしているのだが、聴けば…

ベートーヴェン「交響曲第2番、第4番」

恥ずかしながらベートーヴェンの偶数番シンフォニーを聴いたことがないので、先日、中古屋の棚をあさってみたが、偶数番どうしのカップリングはひとつもない。すでに知っている曲とのカップリングでは、お金を半分損したような気になってしまう(と、どこま…

モーツァルト「春へのあこがれ」

モーツァルト・イヤーも残り少なくなってきた。ところで、今年の企画もので「モーツァルト大全集」というのが出ていたことをいまごろ知った。文字どおりの大全集で、24時間フルに聴いたとして、ぜんぶ聴くのに一週間かかるという膨大なもの。モーツァルト…

「ケンブリッジ・シンガース・コレクション」

朝起きたらいきなり寒くなっていて驚いた。冬はきらいだ……冬はきらいだ、といえば、ドビュッシーの合唱曲「シャルル・ドルレアンの三つの歌」の第三曲を思い出す。冬よ、おまえはどこまでも鬱陶しい(yver, vous n'estes qu'un vilain)、と歌い出されるこの…

ベートーヴェン「交響曲第7番」

ベートーヴェンの交響曲は、まず3番に感嘆し、5番に驚嘆し、9番に落胆してこんにちにいたっている。で、今回7番を聴いてみた(アーノンクール指揮、ヨーロッパ室内管弦楽団、1990年、ワーナークラシックス)。これを聴いて思うのは、ベートーヴェン…

オッター、フォシュベリ「夜の翼/スウェーデン歌曲集」

ストックホルム出身のフォン・オッターの歌うスウェーデン歌曲集(1995年録音、ドイツ・グラモフォン)。これだけである種の期待を抱かせるに十分だが、いっぽうではいかにもありがちな企画のつねとして、じつはたいしたことないんじゃないか、という気…

「ストリンドベリ・イン・ミュージック」

中古屋でみつけて購入。Strindberg in Music (1987, Sterling) Tor Aulin: Master Olof Suite Ture Rangstrom: Dithyramb Orebro Symphony Orchestra / Goran W Nilson *1アウリンもラングストレムもまったく知らない作曲家だ。しかし、ストリンドベリ愛好家…

トレフォイル「楽師と怪獣と迷路」

中世音楽を聴く弊害というものがもしあるとすれば、それは近・現代の曲に対して感受性が鈍くなることだろう。こういうものになじんでしまうと、大バッハの曲すら、なにか色あせたものに聞こえてしまう。これは本末転倒もいいところで、中世音楽などは本来お…

アンサンブル・オルガヌム「シャンティイ写本」

Codex Chantilly, Ballades & Rondeaux -- Ensemble Organum(Harmonia Mundi)くわしいデータはアマゾンその他に譲るとして、これはアルス・スブティリオル初心者には向かないCDであることをまずいっておく。理由は、対位法がひどく強調されているので、ち…

リトル・コンソート「チコーニアとその時代」

チコーニアの作品を中心にしたアルス・スブティリオルの作品集(CHANNEL CLASSICS, 1990)。演奏しているのはリトル・コンソートという小編成のアンサンブルで、楽器構成はフルート、ヴィエル、リュート。それにメッゾ・ソプラノが加わっている。はじめて聴…

アルス・スブティリオルの評価

皆川達夫の「中世・ルネサンスの音楽」(講談社現代新書)を100円でみつけたので購入。ざっと見たところでは、自分のようなたんなるアマチュアにも親切な入門書といった感じの本だ。とりあえずこの本でアルス・スブティリオルに関する記述をさがすと、こ…

ウエルガス・アンサンブル「フェビュスよ、進め」

自殺ソングとして有名なのはダミアの「暗い日曜日」だが、このCDに収められたソラージュの「くすぶった男が(Fumeux fume)」もまた一種の自殺ソングとして聴くことができるのではないか。なにしろ歌われているのが阿片をのむ人々で、阿片吸飲とは緩慢な自…

デヴィッド・マンロウ「宮廷恋愛の技法」

中世音楽のCDは、ちょっと気を抜いているとたちまち廃盤になってしまい、やがて確実に入手困難になる。名盤といわれるものですらそうなのだから、気になるものは見つけしだい買っておく必要がある。といっても、一度にそうたくさん聴くわけにもいかず、と…