2008-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ヨーロッパ式のお時儀

高山氏の本に触発されたわけでもないが、やっぱりアリスは「不思議の国」だけでも読んでおこうと思って本を取り出した。前に買ってあったペンギン・ブックスの子供版のパフィン・ブックスというもの。童話でしかも言語遊戯が満載とあれば、原語版につくにし…

高山宏「アリス狩り」

講談社選書メチエの「奇想天外・英文学講義」をところどころ読みなおしていたらちょっと興味が出てきたので、この高名な英文学者の処女作(だと思う)を読んでみようと思って手に取ったのがこれ(1981年、青土社)。もうかれこれ二十年以上も前に出た本…

「般若心経・金剛般若経」

岩波文庫のお経シリーズの一冊(中村元、紀野一義訳註)。漢訳とその読み下し文、それにサンスクリットからの翻訳が見開き2ページに収まっていて、非常に読みやすい。註がまた念の入ったもので、これだけまとめて通読してもおもしろい。中村元は名前が売れ…

鹿島茂「明日は舞踏会」

同じ著者の「馬車が買いたい!」の女性版として、若い女性向きに書かれた(と著者のいう)十九世紀パリ風俗史(中公文庫、2000年、原本は1997年刊)。骨子となるのはバルザックの「二人の若妻の手記」で、これは修道院から出たばかりの二人の親友が…

Krugとcruche

「木村・相良」(独和辞書)でKrug(つぼ、かめ)をひくと、こんな諺が引かれている。 "der Krug geht so lange zum Wasser, bis er bricht." 意味は「悪事はいつかは破綻をきたす」ということらしい。ところで、フランス語にcrucheという言葉があって、これ…

七宝さまざま

金、銀、瑪瑙、瑠璃、硨磲 玻璃、珊瑚、真珠、玫瑰 琥珀 宝玉の名前には「王」偏のつくものが多い。これは正しくは「玉」偏であって、日本語の「たま」にあたる。上にあげたのは、仏典にいわゆる七宝。七宝なのに十個あるのは、出典によってあげられているも…

吉川幸次郎「陶淵明伝」

シナの詩人で陶淵明くらい「先生」の呼び名が似合うひともいない。自分でも「五柳先生」などと称しているが、彼にはなんとなくひなびた、村夫子然とした面影がある。隠逸伝中の人ながら、たとえば「論語」にたびたび出てくる、あの得体のしれないぶきみな「…