ルッツ・キルヒホーフ「魔女と錬金術師のためのリュート音楽」

sbiaco2007-01-18



ソニー・クラシカルの古楽部門(?)VIVARTEの1枚(2000年)。おもにバロック期のリュート音楽、それも舞曲を中心にあつめたもので、作曲者はアントニー・ホルボーン、ヨハン・ダニエル・ミリウス、ニコラ・ヴァレ、マテウス・ライマン、アタナシウス・キルヒャー、ルイス・デ・ミラン、ルイス・デ・ナルバエス、フランソワ・デュフォー、エサイアス・ロイスナー、ミハエル・マイエル、ベルンハルト・ヨアヒム・ハーゲン、シルヴィウス・レオポルト・ヴァイス、アダム・ファルケンハーゲンといったところ。

と、ずらずら名前を並べてみたが、自分の知っている人はほとんどいない。例外はキルヒャーとマイエルだが、彼らは本職の音楽家ではない。そもそもリュート音楽自体がなじみのないもので、バッハの曲すらひとつも知らないくらいだ。リュートもこのころ(バロック時代)になると、もう単音楽器ではなくていまのクラシック・ギターに近い奏法になっている。音色もまるでギターのようで、知らずに聴けばとてもリュートで弾いているとは思えないだろう。

キルヒホーフはこのCDでルネサンスリュートバロックリュート、テオルボ、ビウエラの4種類のリュートを弾きわけている。しかし、自分なんかの耳にはどの曲でどの楽器が使われているのかさっぱりわからない。さっきも書いたように、どれもギターに聞こえてしまうのだから、楽器の聞き分けなんぞはどだい無理な話だ。しかし、そのことは度外視しても、ここに聞かれる音色はあまりにも癖がなさすぎて、リュート固有の「なまり」を楽しむにはちょっと物足りない。

で、曲の内容はといえば、題名に「魔女と錬金術師のための」とあるにもかかわらず、どうもふつうのバロック舞曲とあまり変らないのではないか、という気がする。題名から期待される密教的あるいは土俗的な要素は稀薄で、いってみればクープランチェンバロ曲のリュート版みたいな感じだ。羊頭狗肉というほどではないが、ここでもちょっと肩透かしをくったような気分になる。

キルヒホーフのあげているド・ランクルの本の挿絵(魔女の集会)には、リュート奏者を中心とする一群の音楽家の姿が描かれている。リュートはやはりこうしたアンサンブルのなかで使われたほうがいっそう魅力的に響くのではないだろうか。

ちなみに、リュートはドイツ語ではラウテという。ドイツ語らしからぬ典雅な響きだ。