映画

「フェリーニのローマ」

この前アマゾンで「サテリコン」を買ったら、さっそくメールで「おすすめ」がきた。やはり1000円を切る廉価版なので遅疑なく購入、鑑賞。ここに描かれたローマはまさに現代のバビロンである。「大いなるバビロンは倒れたり」──しかしローマは倒れても何…

「時よとまれ、君は美しい〜ミュンヘンの17日」

原題は Visions of Eight(八人の映像)。これのサウンドトラックが気に入っていたので、映画も見ることにした。DVDのパッケージに「肉眼では捉えられない映像」とあるとおり、カメラの記録性をフルに生かしたドキュメンタリー。しかしそんなことよりも、こ…

フェリーニ「サテリコン」

なんとなく成行きでDVDを買ってしまう。千円を切るとはずいぶん安い。これは大昔に一度見たことがあるが、今回あらためて見直してみて、思っていた以上に病んだ映画であることに驚いた。フェリーニの病的な想像力がマックスに達したときの映画だと思われる。…

ニコラス・ローグ「赤い影」

こわい、こわい! こんな映画は夜にひとりで見るものじゃない! 原題は DON'T LOOK NOW という無愛想なものだが、これと比べたら「赤い影」という邦題のほうがずっと象徴的で、しかも核心に迫っている。赤い影とはつまり死の影で、「死」が赤いレインコート…

「思春の森」

ネットにあったのを落としてみたが、これは非常によろしくない作品だ。何がよろしくないといって、作者がこの映画で何を表現しようとしたのか、それがさっぱりわからないことがひとつ、それとほとんど無意味ないじめや動物虐待が描かれているのも腑に落ちな…

フリッツ・ラング「M」

いわずと知れた名作。きのうの日記でちょっと触れたので探してみると、これまたニコニコ動画にアップされている。古典的な映画に関してはもうパソコンがあればDVDを借りる必要もなさそうだ。M 1/8 - ニコニコ動画これはだいぶ前にビデオで見たが、筋はほ…

セルジュ・ブールギニョン「シベールの日曜日」

1962年のフランス映画。かつて母の友人が見て大感動した、というので気になっていたもの。一年ほど前にレンタル店で見つけて、そのうち借りようと思っていたら、いつのまにか店がつぶれていた。とうぶん見るのは無理そうだったが、意外なことにニコニコ…

レオン・グッチ「ザ・ロリータ/姦痛」

花粉症で目と鼻がやられて、はなはだ意気があがらないので、どうでもいいことを書いて更新する。この映画はもう20年以上も前の作品だが、当時はちょっとした評判になっていて、私のバイト先の先輩がこの映画について熱く語っていたことを思い出す(原題:T…

「小さな悪の華」

ちょっと前から気になっていたのをやっと見た(ジョエル・セリア監督、1970年、フランス)。これはすばらしい。名作というにはほど遠いが、なんというか私の嗜好にみごとにはまる。原題はMais ne nous delivrez pas du mal(私たちを悪から解き放ちたも…

「盲獣」

この前の「からっ風野郎」の感想で、三島由紀夫はヤクザ映画ではなくて乱歩の「陰獣」のほうが似合っていたのでは、みたいなことを書いたが、レンタル店へ行くと、同じ監督(増村保造)の「盲獣」というのが置いてあったのでちょっとびっくりした。主演は船…

「からっ風野郎」

1960年の大映映画(増村保造監督)。怪優(?)三島由紀夫の魅力が炸裂! といいたいところだが、じっさいは危なっかしくて正視できたものではない。なんだって彼はこんな悪趣味な映画に出たのだろうか。みずから志願したのか、あるいは製作者の依頼をう…

オールタイムベスト10

http://d.hatena.ne.jp/washburn1975/20071203 via Sweetnessおもしろそうなので自分も便乗してみましょうと10本選んでみたが、上記のページのトラックバックを見ているとアップする気がうせた。というのも自分の選んだのとかぶっているのがひとつもないの…

「テンプルちゃんの小公女」

シャーリー・テンプルの名前は前から知っていたが、じっさいに見るのは今回がはじめてだ。1939年のアメリカ映画で、監督はウォルター・ラング。舞台は十九世紀末のイギリスだが、テイストは完全にアメリカのもので、家族みんなで楽しめるような娯楽映画…

「河内カルメン」

三連休をみごとに仕事でつぶされたので、その散欝のつもりで借りたもの。1966年の日活映画で、監督は鈴木清順。見たのは昨日のことだが、見終ってから私には珍しく検索エンジンでこの映画の評判を調べてみた。おおむね好評。ときに絶賛。けなしているの…

「修羅雪姫」

検索していたらいつの間にか辿りついた作品(東宝映画、1974年、藤田敏八監督)。冒頭から血しぶきの雨あられだ。しかし、それがけっして醜悪ではなくて、むしろ美しい。美しいといえば、この映画の全体がなんともいえず美しい。よくできた日本画みたい…

「世にも怪奇な物語」

とくに感想を書くつもりもなかったが、前回の記事があまりにめちゃくちゃだったので、少しだけ補足しておく。この映画、あらためて見るとやはり古くさい。それはとくにファッションにおいて顕著だ。この古くささは60年代、70年代の映画に特有のもので、…

DVDの魅力

長くかかっていた単純作業にようやくけりをつける。いささか鬱懐を消した、といいたい気分。この前、会社の近所のレンタルビデオ店で、レンタル落ちのビデオやDVDを安く売っているのを発見した。しかしDVDはともかくビデオはちょっと買う気がしない。…

ボロヴツィク「修道女の悶え」

私的追悼の第一回。*177年製作のイタリア映画らしいが、タイトルロールはフランス語、そして音声はなぜか英語になっている。なんで吹き替え版をわざわざDVDにしたのか、という疑問はさておき、この映画は駄作の多いボロヴズィックの作品のうちでは出来…

追悼、ボロヴズィック

ワレリアン・ボロヴズィックが亡くなったらしい。それも去年の2月に。日本では訃報はまったく出ず、英語圏でもひと月遅れで発表されたらしいから、いかにこの監督の注目度が低いかよくわかる。まあ、撮っている映画にろくなのがないから仕方がない。「エマ…

ボロヴズィック「邪淫の館・獣人」

ノーカット、ヘア解禁版とのことだが、これを見たら、いままでこの映画を傑作、傑作といっていたのが恥ずかしくなってきた。まずこんな映画はだれにもすすめられない。家族で見るなんて論外だ。日本での劇場公開版は、スキャンダラスとはいいながら、かろう…

かつて見た映画の

DVDをまたしても買ってしまった(中古でだが)。この日記でも初めのほうに書いた*1ワレリアン・ボロヴズィックの「邪淫の館・獣人」がそれ。こうやって題名を記すだけでも指先がふるえ、ジャケットを眺めているだけでも胸がどきどきしてくる。まちがいな…

ロバート・オルドリッチ「何がジェーンに起ったか?」

1962年製作のアメリカ映画。楳図かずお氏の「おろち」(姉妹)に霊感をあたえたというので気になっていたもの。しかし、じっさいに見てみると、両者はあまり似ていない。似ているのは、姉妹の愛憎を描いていることと、被害者だと思われていたほうがじつ…

デイヴィッド・スレイド「ハードキャンディ」

レンタルショップのカードの更新のついでに借りてきたもの。たまには新作を、と思って借りてみた。一部では評判になっていたらしいのでちょっとは期待したが、たいしておもしろくもない。評価でいえば星二つくらい。アマゾンのレビューを見ると、どれもうま…

「カリガリ博士」

いわずと知れたロベルト・ウィーネの名作(1919年、ドイツ)。いま見なおすとちょっと稚拙に思えるところもあるが、やはりすばらしい映画、愛すべき映画のひとつであることに変りはない。ただ、どうも画質が荒くて、明暗のコントラストがきつすぎるのが…

吸血鬼映画考

この前、ドライヤーの映画についてちょっと否定的な感想を書いたが、この映画、ふしぎなことに見たあとでだんだんと効いてくる。道を歩いていても、仕事をしていても、ことあるごとにさまざまなシーンが脳裏に浮かんでくる。白昼夢のような印象が自分のなか…

「吸血鬼ノスフェラトゥ」

WHDジャパンの廉価DVDの二枚目(ムルナウ監督、1922年、ドイツ)。これも以前ビデオで見たものだが、「ゴーレム」よりはよく覚えていた。今回ちょっと意外だったのは、ノスフェラトゥよりも召使(?)のレンフィールドの存在感のほうが上回ってい…

「巨人ゴーレム」

パウル・ヴェゲナー監督のサイレント映画(1920年、WHDジャパン)。これは前に一度ビデオで見たことがあるけれども、アマゾンで500円で売っていたので思わず買ってしまった。同時に購入したのは「カリガリ博士」と「吸血鬼ノスフェラトゥ」。50…

カール・ドライヤー「ヴァンパイア」

久しぶりに近所のDVDレンタル店をのぞくと、品揃えがずいぶん変っていて驚いた。どうやらビデオはほぼ一掃されたようで、その空いたスペースにクラシック映画をだいぶつめこんだみたいだ。きょうはとりあえずカール・ドライヤーの「ヴァンパイア(吸血鬼…

クリステンセン「魔女」

聞きしにまさる怪作(ベンヤミン・クリステンセン監督、1922年)。こんな映画はいままで見たことがない。しいて似たような映画をあげるとすれば、同じくサイレントの「イントレランス」くらいか。ただし、「イントレランス」がセットの豪華さで見るもの…

ダニエル・シュミット「ラ・パロマ」

ダニエル・シュミットが亡くなった。彼の作品では、「ラ・パロマ」というのをかつてテレビでみたことがある。これは深夜の放送だったから、半分寝ながら見ていたようなものだが、ふしぎに記憶に残っている。といっても、内容はきれいに忘れてしまった。ただ…