2010-01-01から1年間の記事一覧

à la Twitter

さすがにひと月以上も更新しないとリンク元の数が千を越えるようだ。このままほっといたらどこまでも増え続けていくのだろうか。さて、久しぶりにラヴェルの「ダフニスとクロエ」を聴いていた。ほんとのことをいえば、ドビュッシーの「牧神の午後〜」よりも…

日夏訳「スフィンクス」について

だいぶ前にある人と共同で日夏の「スフィンクス」(ワイルドの長詩)を改訳しようと試みたことがある。その企画は私のほうで嫌気がさしてしまったのでお流れになったが、どうしてそのとき嫌気がさしたかというと、どんなものであれ個人が一個の作品として提…

ルーセル「賢い妻の返答」

ハーバート・A・ジャイルズがほぼ一世紀前に出した「支那詩選」から、アンリ・ピエール・ロシェが仏訳した一篇をとって、アルベール・ルーセルが曲をつけたものに、「賢い妻の返答(Réponse d'une épouse sage)」というのがある。ちょっとミステリアスな曲…

「イビッド」競訳のこと

以前 id:SerpentiNaga さんにラヴクラフトの「イビッド」を二人で訳してみませんか、と話をもちかけたところ、快く承諾してくださった。二人で訳すといってもいわゆる共訳ではなくて、別々に訳したものをあとで見せ合うという、ただそれだけのもの。じつはそ…

「曼華鏡の旅」のつづきを……

メールをチェックしたら、weltnachtさんの名前が出てきて驚く。ツイッターのアカウントのフォロー通知だが、とりあえずはお帰りなさい、といっておこう。と同時に、weltnachtさんの姿が見えないのですっかりやる気をなくしていたイレル=エルランジェの翻訳…

詩はアンソロジーで読むべきか

丸谷才一ってまだ生きているのかしらん、と気になって調べてみると、ウィキペディアを見るかぎりまだご存命のようだ。そういえば何年か前に新訳「ロリータ」について新聞に書いていたくらいだから、生きていてもふしぎはない。おそらくは文学者らしい文学者…

極私的平井呈一論

先日Twitterで平井呈一の話題が出て、意外にも若い人にまでこの人の影響が及んでいるらしいことを知った。ネットで見てもおおむね好意的な記事がめだつ。私も「うん、平井呈一いいね」のひとことですませたいところなのだが、それではおもしろくない?ので、…

外国語の本と長くつきあっていく方法ひとつ

英語の勉強を中学高校の6年間だけでやめてしまう人が多いようだが、それはちょっともったいない。なぜなら、英語を知っているだけで読める本の幅がかなり広くなるから。邦訳がない、あるいは品切だといって嘆く人をよく見かけるが、英語ができれば原書なり…

アマチュア翻訳のすすめ

Cacoethes scribendiという言葉があって、「書きたがる悪癖」と訳される。物書きといわれる人々はまずこの性癖があって、それに促されて仕事をしているように見えるのだが、しかしたんにカコエテス・スクリベンディだけではおそらく不十分で、もうひとつ、ca…

文芸ガーリッシュとは何か

千野帽子さんの宣言にいわく、文芸ガーリッシュとは、「志は高く、心は狭い小娘のための、読書のスタイル」である、と*1。しかしこれだけでは何のことかよく分らない。ある種の文学少女の本の読み方のことなのか、と思ってしまってもおかしくない。さらに帽…

千野帽子「世界小娘文学全集──文芸ガーリッシュ 舶来篇」

先日読んでいたく感心したフランシス・ジャムの「三人の少女」が取り上げられているというので買ってみた(河出書房新社、2009年)。だれだかわからない少女に宛てて書かれた手紙の集録という体裁をとっている。全体は十章に分けられていて、それぞれの…

戦前の母親像

「少女の友」昭和15年3月号の読者投稿の短歌の課題は「母」。母を歌った少女たちの短歌が2ページにわたって掲載されているが、これを見て驚くのは「老いた母」を歌っているのがかなり多いこと。14,5の娘さんのお母さんならそんな年でもあるまいに、…

村岡花子のブック・レヴュー

「少女の友」に村岡花子による山川弥千枝「薔薇は生きてる」の書評が出ていたので、ここに載せておく(昭和13年2月号) この本の著者やちえさんは世に亡い少女です。普通でしたら私は著者の名の上に「故」とつけ、そして名前のあとにも「遺著」と書くはず…

シュオッブの遺稿集

去年(2009年)、マルセル・シュオッブの遺稿集が出たことをいまごろ知る。「マウア(Maua)」という題の本で、内容はかなりエロチックなものらしい。私もシュオビアンのはしくれとして、とりあえず発注しておいた。近日中に読めると思う。かつてピエー…

山川弥千枝「薔薇は生きてる」

id:seemoreglassさん経由で知った「薔薇は生きてる」という書物は、かつてこの世で人に愛しがられていた少女の可憐な幽魂を私のもとに送ってきた。私の部屋は反魂香の匂いならぬ薔薇の香りがときめいて、仄のりとした息吹が私の胸をせつなくする。それゆえ私…