音楽

バッハ「オルゲルビュヒライン」

中学のころから気がかりだったのをいまごろ聴く(ヴァルヒャ「オルガン全集」、モノラル録音)。全体的にわるくはないが、一曲目がよすぎてあとの曲がかすんでしまう。あとの曲といっても44曲もあるので、ほとんど全部がかすんでいるようなものだが……一曲…

ストラヴィンスキー「春の祭典」

あまり好きになれなくて敬遠していた「春の祭典」だが、どういうわけかこのところすっかりはまってしまい、毎日のように聴いている。「春の祭典」なんてつまらんじゃないか、というのが口癖だったのに、この変化はどうしたことだろう。もしかしたら、緩慢な…

アムステルダム運河にて

久しぶりにアーメリングのCDを聴いていて、前から好きだった「アムステルダム運河にて(Aan de Amsterdamse grachten)」をyoutubeにアップしようかな、と思ったらすでにだれかが上げていた(多謝!)。 youtubeにはほかにもこういう楽しい動画(動かないが…

ふたつの「月の光」

大昔の話。たまたまつけたラジオで「名詩名曲」というのをやっていたので聴いてみた。解説は粟津則雄さん。私はこの番組でフランス歌曲にはじめて触れたのだが、そこで紹介されたふたつの「月の光」、すなわちフォーレのものとドビュッシーのものとの聴き比…

「マタイ受難曲」

リヒターによるバッハの宗教曲ばかり集めた10枚組のセットが出たので買ってみた(アルヒーフ)。彼の「マタイ受難曲」は数あるこの曲の録音のうちでも最高の部類に属するらしいので、斎戒沐浴したような気になって聴いてみたが、そんなにいうほどすごいか…

マテリアリストとフォルマリスト

ある特定の音楽について、その指揮者が、あるいは演奏家がどうのこうのという言説にはつねに一種の反感をおぼえる。というのも、ある楽曲がだれかに取り上げられて、演奏というかたちで私たちのもとに届くということがすでに有り難い(つまり稀有な)幸運な…

カール・リヒターの演奏

CDプレイヤーを新調してから、昔買ったCDをあれこれ蒸し返しているが、どうもこれといったものがない。どうしてこんなものにいっときにもせよ熱中したのか、と思ってしまうようなCDばかりでうんざりする。そして残念なことに、その「こんなもの」の中にバッ…

ルーセル「賢い妻の返答」

ハーバート・A・ジャイルズがほぼ一世紀前に出した「支那詩選」から、アンリ・ピエール・ロシェが仏訳した一篇をとって、アルベール・ルーセルが曲をつけたものに、「賢い妻の返答(Réponse d'une épouse sage)」というのがある。ちょっとミステリアスな曲…

マックス・ミドルトン&ロバート・アーワイ「アナザー・スリーパー」

先日の皆既日食で、なんかそんな題の曲があったなあ、と思っていてふと思い出したのが上記のアルバム。確認すると皆既日食ではなくて「Partial Eclipse / Total Madness」だった。このアルバム、ネットを見るかぎりけっこう要望がありそうなのに、いっこうに…

わが懐メロ集〜YouTubeより

最初に自分なりの懐メロの定義を。まず、なんらかのかたちで音源を所持しているものはすべて省いた。そういったものは数年にわたって聴いていることが多いので、当時もいまも「現役」であって、とうてい懐メロにはなりえないから。曲目も演奏者もわからない…

ロンドン中世アンサンブル「この悪魔的な歌」

中世音楽のCDはとうぶん買わないと前に書いたが、またしても買ってしまった(The Medieval Ensemble of London, "Ce Diabolic Chant", L'Oiseau-Lyre, (P)1983, (C)2007)。例によって14世紀末の歌曲集(バラッド、ロンドー、ヴィルレー)。作者もシュゾワ…

「夢見るフランス・ギャル〜アンソロジー'63/'68」

フランス・ギャルのレコード(CD)を買うのはこれが二枚目(フィリップス、2000年)。一枚目のは10年以上もずっと聴いているいわゆる「赤ベスト盤」で、これはジャケットといい内容といい文句なしのベスト盤。フランス・ギャルはもうこれだけでいい…

ジャック・ブルース「スピリット」

1971年から78年までのBBC音源を集めた3枚組。ロック・セッションとジャズ・セッションとからなっている。ロック・セッションのほうは……うーん、まあそれなりにいいんだけれども、やはりこういうフォーマットではどうしてもクリームを想起させるの…

エリー・アメリンク「歌の翼に」

フランツさんのところで、今日がアメリンクの76回目の誕生日だったことを知った。そこで自分でもなにか書いて彼女の記念日を寿ぎたいと思った。さて何について書くか、と迷ったが、もう長いこと書こう書こうと思いながらのびのびになっているCDがあるの…

フェラーラ・アンサンブル「パヴィアの甘美なる城館にて」

1998年に仏ハルモニア・ムンディから出たCD(原題:En doulz chastel de Pavie)。副題に「1400年前後のヴィスコンティ家の宮廷における歌曲集」とあるように、なんらかのかたちでヴィスコンティ家と関わりのあった芸術家の曲があつめられている。…

エリー・アメリンク「クリスマスソング集」

クリスマスもすぎてしまったが、今年はどうもクリスマス気分が高まらなかった。巷でもあまりクリスマスソングを耳にしなかったような気がする。いま日本でポピュラーなクリスマスソングは何曲くらいあるのだろうか。ざっと50曲はあるような気がするが、そ…

バッハ「ミサ曲ロ短調」

フランツさんのご紹介(エリー・アーメリングのクリスマス・ソング集: Taubenpost~歌曲雑感)で久々にアメリンクのCD(クリスマス・ソング集)を買う。それとはべつに、ミュンヒンガーの「ミサ曲ロ短調」が廉価盤で再発になっていたので、これも買ってみた…

ゴードン・ベック・カルテット「エクスペリメンツ・ウィズ・ポップス」

たまに再燃するブリティッシュ・ジャズ熱に浮かされて買ったもの(原盤メジャーマイナー、1967年。デジタル・リマスター盤Art of Life Records、2000年)。題名にポップスとあるからといってナメてはいけない。これはポップスの皮をかぶった(?)超…

「サラ・ヴォーン・イン・ザ・ランド・オブ・ハイファイ」

1955年録音の作品(ユニバーサル・ミュージック発売。原盤はエマーシー)。このうちの一曲、「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」がたまたまカセットに録音してあって、それを繰り返し聴いていた私は、いつかこの曲が入ったフル・アルバムを聴いてみたいと思って…

極私的歌謡曲論あるいはyou tube始末記

you tubeを見る楽しみのひとつは、自分が子供のころに出た映像をさがすことにある。思いきり後ろ向きの快楽だが、ほっといてくれ、おっさんにはおっさんの楽しみがある。こういうのは若いモンには味わえまい、とやや自嘲ぎみに開き直っておく。さて、自分が…

音楽、その精神性と肉体性

このところ音楽についてあまり書かなくなった。書かなくなったというより書けなくなったといったほうがいい。CDを聴くのをやめたわけではないが、感想文作成欲を刺激するようなものになかなか出会わなくなっている。フェラーラ・アンサンブルとかマーラ・プ…

チェチーリア・バルトリ「イタリア古典歌曲集」

DHMのボックスセットを聴いていて思うのは、声楽ではやはりイタリア、スペインものがいいなあ、ということ。こういった曲ではまた歌手に逸材を揃えているんですよね。ところで、声楽学習者の教材として「イタリア古典歌曲集」というのがあります。私はこ…

バッハ「無伴奏チェロ組曲」

DHM50枚組のうちの2枚(演奏はヒデミ・スズキ)。この曲集、断片的にはこれまでもちょくちょく耳にしていたが、まとめて聴くのは今回がはじめてだ。で、はじめて聴いた感想だが、「とりつく島もない」というのが正直なところ。なんだろうね、この手応…

ドイツ・ハルモニア・ムンディの50年

Scarboさんの記事(たとえばこれ)を読んで気になっていたのを購入。50枚組のボックスセットを自分が買うときがくるとは思わなかった。こういうのは金持ちだけが買えばいいのであって、どうせボックスセットなんぞは本の積読といっしょで、「ただもってる…

レ・ジーン・シンガーズのアルバム3枚

今回手に入れたのは次の3枚。"60 French Girls Can't Be Wrong!" "60 French Girls Can't Be Wrong!, vol.2" "60 French Girls"発売元はいずれもABC PARAMOUNTで、発売年は不明(いわゆるs.d.)。3枚もいっぺんに手に入れて、聴くのが大変ではないか、と思…

LPプレイヤー復活

そのむかし、レ・ジーン・シンガーズという、十三歳から十六歳までの少女ばかり集めた60人編成のコーラスグループがあって、これがちょっと気になっていた。このグループの音で私の聴いたのは、シャンソンのオムニバス盤に入っていた「セ・シ・ボン」だけ…

フェラーラ・アンサンブル「三つの歌のバラード」

1995年、ということはこの前紹介した「美徳の華」の一年前に、同じくアルカナというレーベルから出たもの("Balades a iii chans" de Johan Robert & al.)。題名にある「三つの歌」とは、「三つの声部」というほどの意味だと思われる。ここに集められた…

バッハ「クリスマス・オラトリオ」

だいぶ前に、この曲はクリスマス限定にする、というようなことを書いた。じつはそういうわけにもいかず、ときどき取り出して聴いているが、まったくバッハという人は私が音楽に興味を失うたびに救いの手を差しのべてくれる。本道へ連れ戻してくれる、といっ…

「ディーリアス・フェスティバル」

「シナラ」が入っているというので聴いてみた(EMI EMINENCE, 1988)。これはEMIのいろんな録音から適当に選んだオムニバス盤で、指揮者だけでもマルコム・サージェント卿、ジョン・バルビロリ卿、フィリップ・レッジャー、メレディス・デヴィース、チャ…

エヴァ・メイ「真夜中に〜イタリア・サロン歌曲集」

三人のオペラ作曲家(ロッシーニ、ベッリーニ、ドニゼッティ)のサロン歌曲をあつめたCD(BMGビクター、1995年)。ピアノ伴奏はファビオ・ビディーニ。これを聴いていると、自分にとって歌曲との蜜月は終った、と感じざるをえない。この分野におい…