2008-10-01から1ヶ月間の記事一覧

極私的歌謡曲論あるいはyou tube始末記

you tubeを見る楽しみのひとつは、自分が子供のころに出た映像をさがすことにある。思いきり後ろ向きの快楽だが、ほっといてくれ、おっさんにはおっさんの楽しみがある。こういうのは若いモンには味わえまい、とやや自嘲ぎみに開き直っておく。さて、自分が…

音楽、その精神性と肉体性

このところ音楽についてあまり書かなくなった。書かなくなったというより書けなくなったといったほうがいい。CDを聴くのをやめたわけではないが、感想文作成欲を刺激するようなものになかなか出会わなくなっている。フェラーラ・アンサンブルとかマーラ・プ…

カーリダーサ「シャクンタラー姫」

「マーラヴィカー」が非常によかったので、ついでにこれを読み返してみた(辻直四郎訳、岩波文庫)。訳文は以前に思ったほど凝ったものではない。大地原氏の訳を読んだあとではすっきりしすぎていて物足りないくらいだ。この戯曲はカーリダーサのものではい…

カーリダーサ「公女マーラヴィカーとアグニミトラ王 他一篇」

大地原豊訳の岩波文庫(他一篇は「武勲(王)に契られしウルヴァシー」)。同文庫では辻直四郎訳の「シャクンタラー姫」が先行しているので、これはいわばその続篇にあたる。カーリダーサの戯曲のうち異論の余地なく真作と認められているのはこの三篇だけら…

ディドロ「絵画について」

サロン評で有名なディドロの比較的まとまった絵画論(佐々木健一訳、岩波文庫)。サロン評というのは一種の時評で、この本にもそういった要素は随所に目につく。当時(十八世紀中葉)のフランス画壇のことを知らないと、理解しにくいところも多い。逆にいえ…

イグナチオ・デ・ロヨラ「ある巡礼者の物語」

副題に「イグナチオ・デ・ロヨラ自叙伝」とあるとおり、イグナチオが晩年に書いた、というか口述筆記させた自伝(門脇佳吉訳、岩波文庫)。語り口はひどく朴訥然としたもので、たぶん訳者による註解なしにはおもしろく読まれないだろう。その意味で訳者の貢…