2009-05-01から1ヶ月間の記事一覧

内村鑑三「余は如何にして基督信徒となりし乎」

著者が英語で書いたエッセイを鈴木俊郎が訳したもの(岩波文庫、改訳版)。題名はものものしいが、内容はきわめて平明な文で書かれている。これは著者なりの「或る魂の発展」であって、じっさいこれを読んだストリンドベリは「青い本」に感想を書きとめてい…

ロンドン中世アンサンブル「この悪魔的な歌」

中世音楽のCDはとうぶん買わないと前に書いたが、またしても買ってしまった(The Medieval Ensemble of London, "Ce Diabolic Chant", L'Oiseau-Lyre, (P)1983, (C)2007)。例によって14世紀末の歌曲集(バラッド、ロンドー、ヴィルレー)。作者もシュゾワ…

ボードレールの新訳にふれて

anatorさんのおすすめに従って「ボードレール、マイヤー、ペイター」を買う。ネット古書で500円だった。これには「悪の華」の新訳(といってもすでに20年以上も前のものだが)が入っている。おまけ(?)とはいえ、ボードレール愛好家としては読まない…

ベラミー「顧りみれば」

岩波文庫のユートピア文学の四冊目(山本政喜訳)。もうそろそろ食傷気味かな、とも思うが、この本はおもしろかった。たぶんロマンス*1としての出来では他の三冊を圧倒している。ここに述べられた理想郷としてのボストン(2000年のボストン)にしても、…

「モネルの書」と「建築の七灯」

「モネル」第一部をやっとかたづける(→マルセル・シュオッブ「モネルの書」 - 翻訳文書館)。いろいろと怪しいところはあるが、とりわけわからないのは次の一節。Souffle sur la lampe de vie que le coureur te tend. Car toute lampe ancienne est fumeus…

マイエル「フッテン最後の日々」

スイスの文豪マイエルの長篇連作詩集(浅井真男訳、岩波文庫、昭和16年)。読む前はフッテンが人名とは知らず、「ポンペイ最後の日」からの連想で地名か何かかと思っていた。ウルリヒ・フォン・フッテンは実在の人物で、プロテスタンティズムの闘士であり…

ウィリアム・モリス「ユートピアだより」

岩波文庫のユートピアものの三冊目(松村達雄訳)。この本は便宜上(?)白帯に分類されているけれども、内容はほとんど文学作品なので、むしろ赤帯のほうが適当なように思う。そのことはとくに本書の後半に顕著で、そこで語られるテムズ河上りにはモリスの…