2007-02-01から1ヶ月間の記事一覧

由良君美「言語文化のフロンティア」

1975年に創元社から出たもの。題名からもある程度察しがつくが、著者の大学人としての性格がつよく出ている。そのぶん、趣味人、風流人としての由良君美は後方へ押しやられている。といっても、そういう学問的な(というよりも勉学的な)色彩の濃い本書…

P.B.シェリー「メドゥーサ」

をりしも時はぬばたまの 彼方の夜空あふぎつつ 曇りし山の頂きに 横たはりたる女人あり はるか下界に遠つ国 かすむがごとく望まれき 其の恐ろしさ、其の美(は)しさ この世のものとも思はれず。 其の唇と目蓋には なにやららうたき風情さへ そこはかとなく…

10年前の日記

机のなかを整理していたら、むかし作ったフロッピーが何枚か出てきた。10年近くも前のものなので、ラベルに書かれているタイトルを見ただけでは、どんな内容なのかまったく見当がつかない。なにが書いてあるのかちょっと見てみようと思って読みはじめたら…

岡田温司「処女懐胎」

中公新書が誇る(?)もう一人の岡田氏の本。これは「処女懐胎」という題がついているが、内容からすればむしろ「聖家族」とでもしたほうがよかったかもしれない。というのも、本書で扱われているのは、マリアとイエスとの関係だけではなく、その夫ヨセフ、…

「カリガリ博士」

いわずと知れたロベルト・ウィーネの名作(1919年、ドイツ)。いま見なおすとちょっと稚拙に思えるところもあるが、やはりすばらしい映画、愛すべき映画のひとつであることに変りはない。ただ、どうも画質が荒くて、明暗のコントラストがきつすぎるのが…

吸血鬼映画考

この前、ドライヤーの映画についてちょっと否定的な感想を書いたが、この映画、ふしぎなことに見たあとでだんだんと効いてくる。道を歩いていても、仕事をしていても、ことあるごとにさまざまなシーンが脳裏に浮かんでくる。白昼夢のような印象が自分のなか…