バルトーク「弦楽四重奏曲1番〜6番」

sbiaco2007-01-26



バルトーク音楽史上、バッハと並んで、いやある意味ではバッハ以上に「無敵の人」なのではないか。彼に対して発せられる批判の矢も、その多くは的をはずれるか、まれにあたってもことごとくはね返されてしまう。どんな辛辣な評言も、彼にあっては賛辞に変わってしまうかのようだ。ことほどさようにこの人には隙がない。たとえ全世界の人から忘れ去られるときがきたとしても、バルトークはあくまでバルトークでありつづけるだろう。彼には、何度も死んで墓場の秘密を知った吸血鬼のような面影がある。彼の音楽には、固い宝石のような炎が青白く燃えている。

これが遠目にみた彼の姿だ。

さて、今回バルトーク弦楽四重奏曲集(アルバン・ベルク・カルテット、EMI CLASSICS)を聴いてみたが、やはり彼に対するそういった印象はつよまるばかりだ。彼の音楽を聴くと、ハンガリーこそが吸血鬼の本場なのだということがよくわかる。ヴァンピリズムと、それからメスメリズムと。この二つの要素はバルトークの音楽の骨格をなしている。そして、それが聴き手に呪縛のような効果をもたらすのだ。

アルバン・ベルク・カルテットの演奏を聴くのははじめてだが、これはそうとうにすごい演奏なのではないか、と思う。バルトークの音楽の非人間性を表現してあますところがない。彼らの演奏するベートーヴェンはどんなものだろうか。そんなことがふと気になった。