LPの思い出

sbiaco2007-03-15



思い出といっても、LPは子供の私には高くてなかなか買えなかった。だいたい近所のレンタル屋さんで借りてカセットに録音して聴いていたのが多い。だから家にあるLPも数は少なくて、LPラック1ケースにちょうどおさまるくらい。

いまはCDしか聴かないので、LPはお荷物になっている。聴き返したいと思うようなのもあまりない。そもそもLPプレーヤーの針がないので聴きたくても聴けない。まあ、どうしてもという場合はCDを買いなおすという手もある。当時は聴きたくてもなかなか見つからず、中古屋をまわってやっと手に入れたようなものも、いまではCDで再発されて手軽に聴くことができるのだから、あまりありがたみはないけれども。

数日前、部屋を掃除していて、昔のLPもざっと見なおしてみたが、なかにはちょっともっているのが恥ずかしいようなのもあった。たとえばフランス・ギャルのベスト(ポリグラム、1989年、輸入盤)なんかがそれだ。

フランス・ギャルのベストは何枚かあるようだが、自分のもっているのはこれ一枚だけ。このLPはなんといってもジャケットがすばらしい。クラシックやジャズなどでも演奏者の顔写真がアップで写っているのがあるが、正直いってかんべんしてほしいと思うようなのも少なくない。内容はいいとわかっているのに、顔写真どアップのせいで、どうしても買う気になれないCDがどれだけあることか。ジャズはともかく、クラシックではやめてほしいと思うのだが、だれも注意するひとはいないのだろうか。

そこへいくと、このフランス・ギャルのジャケットは、それだけで購買意欲をそそるようななにかがある。彼女の歌は何曲かカセットに録音して聴いていたが、これを中古屋で見つけたときは、ためらわずすぐさまレジにもっていった。まあ、値段も安くて1000円もしなかったと思う。

自分には珍しいジャケ買いだが、これは買ってよかった。というのも、このLPはいたるところ60年代テイストが横溢していて、自分のような人間にはこれがたまらない魅力だからだ。曲はどれもフレンチ・ボンボン(あるいはロリポップ?)のように甘いものばかりで、聴いているだけで幸せな気分になる。なかでも印象的なのは「ティーニー・ウィニー・ボッピー」というゲンズブールの書いた曲だ。やっつけ仕事のようだが、ふしぎに胸をつくような感興がある。

このLPを聴くためだけでも、針を新調しようかと思っているが、じっさいに聴きなおしてみると、意外につまらないかもしれない。この作品にかぎらず、当時のLPすべてが自分にとっては過去の思い出にすぎないからだ。思い出は思い出のままでそっとしておくのがいいのだろうか。そう思うと、針を買う気がだんだん失せてくる。