「ケンブリッジ・シンガース・コレクション」

sbiaco2006-11-12



朝起きたらいきなり寒くなっていて驚いた。冬はきらいだ……

冬はきらいだ、といえば、ドビュッシーの合唱曲「シャルル・ドルレアンの三つの歌」の第三曲を思い出す。冬よ、おまえはどこまでも鬱陶しい(yver, vous n'estes qu'un vilain)、と歌い出されるこの曲は、しかし歌詞とはうらはらに、なにやら冬のひそかな楽しみを描いているかのような親密さにあふれている。この親密な雰囲気は他の二曲にも共通していて、全体がクリスマス・ソングのようなほのぼのとした暖かさに包まれている。ドビュッシーはここではいつもの斬新な響きの追求を放棄して、ひたすらシャルル・ドルレアンの詩にあわせてルネサンスふうの曲を書くことに専念しているかのようだ。とはいっても、やはりドビュッシー特有のテイストはそこかしこに聴くことができる。どうも天才というのは、パスティッシュをやってもどこかにおのれの刻印をおさずにはすまないらしい。

この曲が収められた「THE CAMBRIDGE SINGERS COLLECTION」(Collegium Records)は、ジョン・ラター率いる合唱団の8枚のCDからピックアップされた19曲からなるオムニバス盤。民謡を編曲したものや、英国のルネサンス時代の曲、それにラター自身のオリジナル曲も何曲か入っている。全体的にパセティックな曲調のものが多く、聴いているとなにやら胸がしめつけられるようなノスタルジーを感じる。もちろんそれは不快なものではく、むしろ甘美といってもいいような体験だ。

それにしても、こういうオムニバス盤を聴くと、世の中には自分の知らないすばらしい曲がいっぱいあるんだな、とあらためて思う。そして、そういうすばらしい曲はついこの瞬間にも生れているのかもしれない、とも。