ベートーヴェン「交響曲第2番、第4番」

sbiaco2006-11-26



恥ずかしながらベートーヴェンの偶数番シンフォニーを聴いたことがないので、先日、中古屋の棚をあさってみたが、偶数番どうしのカップリングはひとつもない。すでに知っている曲とのカップリングでは、お金を半分損したような気になってしまう(と、どこまでもケチなわたくし)……まあ、たしかに偶数番は6番を除いて一般にあまり人気がないようなので、奇数番との組み合わせでないとなかなか売れないのだろう。

しかし、ないとなると急に聴きたくなる。家に帰ってからアマゾンで調べると、数は少ないものの、偶数番のカップリングがみつかった。そのうちから、ブロムシュテット&シュターツカペレ・ドレスデンの録音を聴いてみることにした(徳間ジャパンコミュニケーションズ)。

値段が安かったこともあって、あまり期待していなかったが、二度、三度と聴くうちに、このディスク、かなりの出来ばえではないか、と思いはじめた。ほかのと比べて聴いたわけではないのであくまで単体としての評価だが、どこといって文句のつけようがない。まさにあるがままに演奏されているという気がする。録音もきれいにまとまっていて、楽器の分離もわるくない。これで1000円は安い。

それと、曲がまたいい。さすがに3番、5番といった高峰には及ぶべくもないが、7番よりはいいのではないだろうか。とくに4番がすばらしい。出だしはなにやら幽邃な感じで、それだけでも意表をつかれるのだが、やがてクレッシェンドとともに、いつものベートーヴェン節炸裂となる。やれやれ、出たか、とも思うが、7番で感じたようなカラ元気ではなくて、ここにはじつに自然な感情の高まりがある。

第2楽章のおおらかな展開もいいし、第4楽章も協奏曲みたいでおもしろい。とくに第4楽章は無窮動曲のような細かい音符がつづくので、演奏するのはそうとうに大変なのではないかと思うが、一糸乱れぬアンサンブルで安心して聴ける。シュターツカペレ・ドレスデンっていったいどういう楽団なのだろうか。ものがベートーヴェンとなると、これほどの演奏でも「その他大勢」のなかに入ってしまうのだろうか。

カラヤンクレンペラーフルトヴェングラー。彼らはたしかに大指揮者で、一種の魔術師でもあるのだが、魔術師は容易に山師に転化する。彼らの演奏をもちあげるのはいいとして、そのすべてがはたしてすぐれたものだろうか。なかにはペテンやトリックもまじっているのではないか。

少なくとも自分の場合、もうそういった大指揮者の名盤はいらない。大作曲家と大演奏家との二重の桎梏にがんじがらめにされるのはまっぴらである。音楽の演奏はゾルレンではなくザインでじゅうぶんだ。今回買ったCDは、そんな自分の考えを積極的に肯定してくれるものだった。