アルス・スブティリオルの評価


皆川達夫の「中世・ルネサンスの音楽」(講談社現代新書)を100円でみつけたので購入。ざっと見たところでは、自分のようなたんなるアマチュアにも親切な入門書といった感じの本だ。とりあえずこの本でアルス・スブティリオルに関する記述をさがすと、こんなのがみつかった。

「この時期(14世紀末)の作曲家として、ソラージュ、トレボール、サンルシュといった人びとの名があげられるが、しょせんはマショーの亜流の域をこえず、しかも全般的にいって世紀末ふうのデカダンスの匂いがこい。

「ペストと戦乱になやまされつづけていたこの十四世紀末には、厭世感と、その反動として騎士道はなやかなりし時代への夢想の傾向が著しく、一種のマニエリスム(誇張の多い技巧的様式)的色彩が際立っているが、それは音楽にも敏感に反映されている。フィリップ・ド・ヴィトリ、マショーらによって形成されたアルス・ノヴァの新生の気運は早くも失われて、技法だけが形骸化して、デカダンスの音楽となってしまっているのは残念である」

この本が出たのは1977年だが、そのころの日本ではこんな評価しかなされていなかったようだ。しかし、この否定的評価、読みようによっては簡単に肯定的評価へと転化するのではないか。自分としてはそこに一縷の望みを託すしかない。