2007-10-01から1ヶ月間の記事一覧

「極北」の意味

ブロワの小説「絶望した男」にhyperboreenという言葉が出てくる。辞書をひくと、「極北の、北方の」と説明が出ている。この「極北」という言葉だが、かつていろんな辞書を引いてみたところ、いずれも「北の果て」というような説明しか出ていなくてふしぎに思…

名作の皮をかぶった駄作十選

昼間車を運転しながら、ふと思い浮かんだのは、名作のふりをしながらそのじつとんでもない駄作がある、ということだった。読んだあとで「金と時間を返せ」と叫びたくなるような作品のことだ。はてなの名作十選もそろそろ落ちついてきたようだし、ここを定期…

西田幾多郎「善の研究」

西田によるフィヒテの訳書の「序」の文体が気に入ったので買ってみた(岩波文庫)。その「序」というのは、こんな感じの文。「……併し大思想家の書を我国語に訳することは、単に他国語を知らざるものをしてその思想を理解せしむるのみでなく、我国語をしてそ…

ド・クインシー「深き淵よりの嘆息」

野島秀勝訳の岩波文庫(2007年)。「阿片常用者の告白」の20年後に書かれたいわば続篇のようなものだが、内容としてはあまり関係がない。この本はどうも第二部の途中で作者が筆を折ったらしく、尻切れとんぼに終っている。といっても、もともとが断章…

格闘技ほか

きのう久しぶりにボクシングを見た。まあNが勝つのは当然として、そんならさっさと早いラウンドでKOしてほしかったな。世界チャンピオンがあの程度ではちょっと情けない。圧倒的な力の差を見せつけてほしかった。しかし世界チャンピオン相手にともかくも…

エヴァ・メイ「真夜中に〜イタリア・サロン歌曲集」

三人のオペラ作曲家(ロッシーニ、ベッリーニ、ドニゼッティ)のサロン歌曲をあつめたCD(BMGビクター、1995年)。ピアノ伴奏はファビオ・ビディーニ。これを聴いていると、自分にとって歌曲との蜜月は終った、と感じざるをえない。この分野におい…

英文解釈について

ドイツ語でさんざん苦労しているので、そのぶん英語の力が相対的にアップしたのではないか、と思って、かつて放り出したコールリッジの「文学評伝」(Biographia Literaria)をもう一度手にとってみた。しかし、期待したほどの変化はないようだ。あいかわら…

フィヒテ「全知識学の基礎」(下)

この本はあとになればなるほどむつかしくなる。第一部「全知識学の根本諸命題」がわりあい明快だったので安心していたが、とんだ誤算だった。おかげで読むのにひどく暇がかかってしまった。しかし、これは読んでいいことをしたと思う。フィヒテは哲学史的に…

関口存男「独作文教程」

大枚はたいて購入(三修社、POD版)*1。まだざっと一瞥しただけだけれども、なにしろ古い本なので、レイアウトその他、およそスマートとはいいがたい。ただその分、なんともいえないごつごつした手作り感があって、読めば読むほど味わいがましそうな、と…