リトル・コンソート「チコーニアとその時代」

sbiaco2006-08-01



チコーニアの作品を中心にしたアルス・スブティリオルの作品集(CHANNEL CLASSICS, 1990)。演奏しているのはリトル・コンソートという小編成のアンサンブルで、楽器構成はフルート、ヴィエル、リュート。それにメッゾ・ソプラノが加わっている。

はじめて聴いたときは、そのシンプルな構成のせいか、なんとなくもの足りなかった。中世の秋ならぬ、中世音楽の秋を感じたものだ。この方面の探求もそろそろ打ち切りにしたほうがいいのかな、とも思った。最初にアルス・スブティリオルの作品を聴きはじめたときのような興奮はもはや感じられない。いつまでもこんなところで足踏みしているわけにはいかないという気持もはたらく。

とはいうものの、何度か聴くうちに、(毎度のことながら)いつのまにかその魅力にとらえらえれてしまっていた。その魅力を言葉で伝えるのはむつかしい。上に「中世音楽の秋を感じる」と書いたけれども、ここに聴かれる音楽は(それとは別の意味で)秋を感じさせるものが多い。「荒れにしあとはただ秋の風」といったふうな、いかにも末世らしいくすんだ感覚だ。しかし、どうしてひとは沈痛なメロディに甘美なものを感じてしまうのだろうか。……

チコーニアは、無名ぞろいのアルス・スブティリオルの作曲家のうちではポピュラーなほうで、出ているCDの数も少なくない。名前のとおり、イタリア人らしいが、曲調はイタリアふうというよりも、いまの耳にはむしろペルーとかアンデスとか、あっちのほうの曲みたいに響く。なかにはロス・インディオスの演奏かと思われるようなものもある。まあ、それがまたひときわ哀感をそそるわけだが。