美術
静物画というとたいていの人はセザンヌを思い出すだろう。私もセザンヌの絵は好きだ。しかし、ああいった印象派ふうのもの以外に、むしろ象徴派ともいいたいようなふしぎな魅力をたたえた静物画が17世紀のオランダで続々と描かれていたことはあまり知られ…
古代ギリシャ、ローマの彫刻を眺めていて、私がいつも不満に思うのは、男性像にはちゃんとある象徴物が女性像にはないことだ。女性には乳のふくらみというべつの象徴物があるから、下半身のものは不要とされてしまったのか、あるいはそれが造形的に美しくな…
由良君美のホガース論(「ディアロゴス演戯」所収)のなかにこんな一節がある。「(「サザック定期市」の絵解きをしながら)バッグパイプ吹きのポーズは、直立した犬と静止した人形と並ぶとき、期せずしてサーカスの雰囲気をかもしだし、フュースリの「真夏…
マール社から出ている「100年前シリーズ」の一冊。図版多数で1000円そこそこという値段につられて買ってみたが、本を開いた瞬間、しまった、これは失敗だ、と思った。というのも、写真図版の印刷がどうにも満足できる水準ではないのだ。古い写真特有…
「ゴーレム」の挿絵がよかったので、彼の本を何冊か注文した。そのうちの一冊がこれだ。注文してから一週間ほどで到着。1976年から79年にかけてドイツ各地で行われた展覧会のときのもの。海外の図録を取り寄せるのは初めてだが、体裁は日本のものとほ…
ペンギン双書の「三つのゴシック小説」の冒頭に、現代のゴシック小説(?)として引き合いに出されていたのがグスタフ・マイリンクの「ゴーレム」とブルガーコフの「巨匠とマルガリータ」だ。ブルガーコフはともかく、マイリンクの本はだいぶ以前に読んだこ…