アンサンブル・オルガヌム「シャンティイ写本」

sbiaco2006-08-27



Codex Chantilly, Ballades & Rondeaux -- Ensemble Organum(Harmonia Mundi)

くわしいデータはアマゾンその他に譲るとして、これはアルス・スブティリオル初心者には向かないCDであることをまずいっておく。理由は、対位法がひどく強調されているので、ちょっと聴いただけでは曲の輪郭がつかめないからだ。他の盤でおおよそのところをつかんでおいてから聴くのがいいと思う。

このCDには12曲が入っているが、そのうちの3曲は前に言及したセンチュリー・シリーズ(「アルス・スブティリオルからルネサンスの夜明けへ」)にも収められている。ちなみにこのセンチュリー・シリーズの残りの4曲を演奏しているのはフェラーラ・アンサンブルというグループで、そのコーラスはこの世のものとも思えないくらい美しい。できればこのグループの元盤も聴いてみたい。

フェラーラ・アンサンブルのものが芸術的にすぐれているとすれば、アンサンブル・オルガヌムのものは学究的にすぐれているといえるだろう。アルス・スブティリオルの技巧的な面に焦点をあてて、それを譜面に忠実に再現していると思われるからだ。ちょっととっつきにくいものの、この流派の真骨頂はあんがいこのあたりにあるのではなかろうか、と思わせるだけの奥の深さがある。

ところで、このCDの題名にもなっているシャンティイ写本だが、いったいどんなものなのか、いまひとつよくわからない。ネットで調べても、情報そのものがひどく偏っている。つまり、アルス・スブティリオルに関連した記述しかあがってこないのだ。自分以外にもこの写本に興味をもっているひとはいると思うので、とりあえず手持ちのCDの解説をもとに、覚え書のようなものを(いつか)書いてみたい。