「カラマーゾフ」を私が翻訳するなら

はてなダイアリーでkinoshitakazuoさんがものすごく詳細な亀山批判をしている。その是非は自分などには判断がつかないが、しかし「カラマーゾフの兄弟」ならば、時間があれば自分にも翻訳できそうな気がする。いや、気がするだけじゃなくて、確実にできる自…

ヨーロッパ式のお時儀

高山氏の本に触発されたわけでもないが、やっぱりアリスは「不思議の国」だけでも読んでおこうと思って本を取り出した。前に買ってあったペンギン・ブックスの子供版のパフィン・ブックスというもの。童話でしかも言語遊戯が満載とあれば、原語版につくにし…

Krugとcruche

「木村・相良」(独和辞書)でKrug(つぼ、かめ)をひくと、こんな諺が引かれている。 "der Krug geht so lange zum Wasser, bis er bricht." 意味は「悪事はいつかは破綻をきたす」ということらしい。ところで、フランス語にcrucheという言葉があって、これ…

七宝さまざま

金、銀、瑪瑙、瑠璃、硨磲 玻璃、珊瑚、真珠、玫瑰 琥珀 宝玉の名前には「王」偏のつくものが多い。これは正しくは「玉」偏であって、日本語の「たま」にあたる。上にあげたのは、仏典にいわゆる七宝。七宝なのに十個あるのは、出典によってあげられているも…

ブロゴスフィア演戯

「久しぶりにアクセス状況を見てみたが、あんまり変化はないようだな。だいたい10人前後が見にきてくれているようだね」 「しかしきみは三年もやってるんだろ。それで10人とはちょっと寂しいな」 「たしかにね。でもまあこれで堂々と過疎ブログを名乗れ…

ファッショについて

最近では禁煙ファシズムなんていう言葉もできているようだが、このファシズムの意味が昔からよくわからなかった。ファシズムとはべつにファッショという言葉もある。これはそもそもどういう意味合いの言葉だろうか。子供のころ、家の向かいに住んでいた小父…

精神の至福は肉体からくる

先週末からずっと目の調子がわるくて、本もPCも満足に見られなかった。こうなると、いかにふだんから視覚に依存した生活を送っているかがよくわかる。仕方がないから部屋の整理をやっていた。今回はとくに念入りに、机のなかまで引っかきまわした。例によ…

皆殺しの天使

ネットのニュースで「死に神」という表現を目にして、これはてっきり「死せる神」すなわち「神は死せり」というあれかと思ったら、なんのことはない「死神」のことだった。小学生の作文じゃあるまいし、天下の大新聞が「死に神」なんて表記をするとはねえ*1…

漢語を和語に

会社で研修をふたつ受けた。その内容のうち、ちょっとおもしろいと思ったのは、「漢語を和語に」、一名「「ご」を「お」に変える」というtip。例をあげれば、「ご着席ください」のかわりに「どうぞお掛けください」ということ。これには私も賛成だ。漢語とい…

本の処分について

http://d.hatena.ne.jp/comc/20080612/1213261952上の記事に触発されて書いてみたが、とくにcomcさんへのレスというわけではなく、ふだん自分が思っていることをだらだらと書いただけ。本(に限らず身辺にたまったもの)の処分はむつかしいところがあって、…

Natural American Spirit

きょうも更新。きょうはタバコの話。私はかなりのヘビースモーカーで、片時もタバコが手放せない人間ですが、最近はそれがひどくなって、気がつくとふた箱(つまり40本)くらい一日に吸っていることもあり、ちょっとやばいな、と思っていました。しかしニ…

追悼=yskszk氏

なんということだろう。以前こちらにコメントをくださったid:yskszkさんが亡くなったらしい。もう長いこと氏の日記を見に行ってなかったが、きょう、なにか急に気になって見に行くと*1、いっぱいトラックバックがあって、いったいどうしたのか?と一つ目のを…

日常の中の非日常

外での仕事を終えて会社に戻ってみると、オフィスがみごとに整理されていて、いつもは書類でいっぱいの私の机にはなにもなく、その机がいくつか一箇所に集められて、上にテーブルクロスがかかっている。会議か、あるいはなにかべつの用事のためにオフィスを…

死刑廃止とその代案

凶悪事件を起こした少年が死刑になるとかなったとか報じられていて、まあ私にはどうでもいいことなんですが、この死刑という制度にだけは昔から疑問を抱いていました。いったい死刑はだれのためにあるのでしょうか。国家のためか、社会のためか、加害者のた…

筐と筺

http://d.hatena.ne.jp/comc/20080411/1207909587comcさんがどういうことを問題にされていたのかわからないが、とりあえずこの字について調べてみると、「筺」の字は「諸橋漢和」(収録字数の多いことをもって鳴る辞書)には出ていない。あと、手持ちの漢和…

追悼、石井桃子

石井桃子さんが百一歳で亡くなったとのこと。失礼ながら、まだご存命だったとは知らなかった。去年、雑誌「ユリイカ」で特集されていたので、なにかあったのかな、と思っていたが、百歳のアニヴァーサリーだったことにいまごろ気づいた。この雑誌は本屋でち…

エロスとアガペ

エロスとアガペとは対比的に用いられることが多く、前者が上昇的、所与的、肉体的な愛であるとすれば、後者は下降的、能与的、精神的な愛であるとされている。しかし私は、両者を分かつ根本的な要因は、「個に対する愛か、類に対する愛か」ではないかと思う…

丸型時計と砂時計、つけたり詩と哲学

ボードレールは時間の脅威を時計に託して歌った。ここで彼が念頭においているのはチクタクと時をきざむふつうの時計。その針や音が彼には脅迫的なものに思われたらしい。しかしふつうの時計はいうまでもなくそんなにこわいものではない。それは時間を円環的…

詩人ではない人間が詩を書く方法

ヨーロッパの伝統的な芸術の分類法に、建築、音楽、絵画、彫刻、文学、演劇の六つにわけるというのがある。七番目が二十世紀になって発達した映画で、八番目以下もあることはあるが、それらは多かれ少なかれハイブリッド種に属する。ところで、こうやって芸…

学校からパソコンを一掃せよ

「奔馬酔淮南」*1で検索していると、こんなページに連れ出された。自慰行為といってもどういうことをしていたのか不明なのでなんともいえないが、小学生なのでまさか射精には至っていないと思われる。この記事を読んでおかしくてたまらないのは、回答が判で…

「駆使」の意味

鈴木信太郎訳「悪の華」に、「大自然がお前(ボードレールの恋人)を駆使して天才一人を捏ね上げる時」という詩句がある。こういう場合の「駆使」をどう解すべきか。そのあとに「お前を道具に利用して」といいかえてあるから、そういうふうに解すべきなのだ…

省察

何時間寝ても眠く、頭の疲れがとれない。この気持のわるさはいったいなにごとだろう。いろいろと思い当たる節はあるが、やっぱりいちばんの理由はパソコンから発する電磁波を浴びつづけていることではないだろうか。電磁波の脳に及ぼす影響なんてトンデモに…

Narthekopherとは

独訳版「モネルの書」の最初のほうにNarthekopherという言葉がでてくる。ふつうの辞書には出ていないが、バイイのギリシャ語辞典には載っている。といっても、「おおういきょうの枝をもつ(人)」というだけではなんのことかわからない。ネットで調べてみる…

理性の眠りは怪物を生む

「finalventさんのwktk読んだ?」 「wktkっていうなよ、気持わるい」 「あれを読むと、いかに氏が品行方正な人かっていうのがよくわかる。とにかく好感のもてる人だな」 「うん、おれたちのまわりはAさんみたいなやつばっかりだからね。そういう連中とつき…

mousme(ムスメ)について

yskszkさんがおもしろい記事を書いている。そこに出ているプルーストのmousme評を見ると、フランス人の日本理解もいいかげんなものだな、と思う。口をとがらせているというのは、moueからの連想だろうか。それはいいとしても、「皺くちゃになるほどの笑顔」…

ボオドレールという表記

私のもっている岩波文庫の「悪の華」の作者は「ボオドレール」であって、ボードレールでもボオドレエルでもない。なんともふしぎな表記というしかないが、鈴木信太郎がこういう奇異な表記をあえて選んだのには訣がありそうだ*1。まずボオドレエル。戦前はず…

訳詩についての雑感の補足

http://d.hatena.ne.jp/inmymemory/20080103inmymemoryさんが私の前の記事(訳詩についての雑文)にトラックバックを送ってくださった。で、ここでなにかひとこと書くべきかと思うが、訳詩についてはもうあまり書くことがない。少なくともいますぐは思いつか…

incompatibility

「きみがこの前書いてたfinalventさんてどんな人?」 「おれもよく知らない。ブログ界ではえらい人らしい。いつも大量の記事とコメントがあって、正直いって驚くよ。朝から晩までPCの前に座りつづけじゃないか」 「おれも宝くじがあたったらそんな生活をし…

矢野峰人の創作詩

あいかわらず矢野峰人で検索してくる人が少なくないので、この機会にもう少しだけ書いておこう。矢野峰人が編者として関わった本のひとつに河出書房の「日本現代詩大系」がある。これは明治の草創期から昭和20年ころまでに出た詩集の集大成で、有名詩人か…

訳詩についての雑感

矢野峰人+シナラで検索してくる人が多いのですが(あくまでも相対的に、ですよ)、私は矢野峰人のよい読者ではないし、英詩についても多くを知りません。ですからこちらへ来られてもたいした情報は提供できないのです。見てがっかりした人には申し訳ないが、…