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「きみがこの前書いてたfinalventさんてどんな人?」
「おれもよく知らない。ブログ界はえらい人らしい。いつも大量の記事とコメントがあって、正直いって驚くよ。朝から晩までPCの前に座りつづけじゃないか」
「おれも宝くじがあたったらそんな生活をしてみたいね」
「この人の過去ログをトレースすることはだれにもできないだろうね。過去の記事を追っかけているうちにもどんどん新しいのが出てきて、おまけにそれが二つもあるというのでは、いつになったら全貌がつかめるのか……」
「そりゃたいへんだ」
「うん、で、おれのいいたいのは、一般に本やCDの世界もそうなんじゃないか、ということ。古いのを追っかけているうちにもどんどん新しいのが出る。過去にばかり目を向けていると、いまどんな本やCDが旬なのかさっぱりわからなくなる。古いのと新しいのと両方追っかけていると、今度は時間がなくなる。それこそ宝くじにでもあたらないかぎりどうにもならない」
「要するに必要なのは金と時間ということか。でもこのふたつ、ふつうには両立しがたいよね」
「うん、だからどっちかになるんだよ。金か時間か、過去か現在か」
「で、きみはどっちをとる?」
「時間と過去。これさえ確保できたら金も現在もいらない」
「そうか。しかし、そんなにきっぱりと分かれるもんかな、そのふたつ。なんだかメビウスの輪みたいになってるような気がするが」
「そうだね、おれもそんな気がしてきたよ。それじゃ、また」