Krugとcruche


「木村・相良」(独和辞書)でKrug(つぼ、かめ)をひくと、こんな諺が引かれている。
"der Krug geht so lange zum Wasser, bis er bricht."
意味は「悪事はいつかは破綻をきたす」ということらしい。

ところで、フランス語にcrucheという言葉があって、これをスタンダード仏和でひくと、やはり同じような諺が引いてある。
"tant va la cruche a l'eau qu'a la fin elle se brise."
これには「どんなものでもついにはすり切れる、たびたび危険を冒せば運の尽きるときが必ず来る」と説明がある。

仏語crucheは独語Krugに由来するらしい。となると、単語といっしょに諺まで取りいれたのだろうか。

この諺は、よく見ていると、なんとなくエロチックな趣がある。クライストの戯曲「こわれがめ」を連想するからだろうか。

ともあれ、これに似た日本の諺はないかと考えてみたが、それらしいのは思い浮ばない。ご存じの方があればご教示ください。

ちなみに、郁文堂の独和辞典でKrugをひくと、同じ諺に「水がめは壊れるまでの井戸通い」という訳が出ている。これはうまいと思った。さっき書いたエロチックなニュアンスまでみごとに掬い上げている。

もうひとつ、このtant va...qu'a la fin...という構文はブルトンの「シュルレアリスム宣言」の冒頭に出てくる。検索すればほかにももっと出てくるかもしれない。

最後に、あまり関係ないけれども、日本語の「割れ鍋に綴じ蓋」に相当するのは独、仏ともにある。
"fuer jeden Topf findet sich ein Deckel."
"il n'est si mechant pot qui ne trouve son couvercle."