「フェリーニのローマ」


この前アマゾンで「サテリコン」を買ったら、さっそくメールで「おすすめ」がきた。やはり1000円を切る廉価版なので遅疑なく購入、鑑賞。

ここに描かれたローマはまさに現代のバビロンである。「大いなるバビロンは倒れたり」──しかしローマは倒れても何度もよみがえる。その繰り返しの結果、街の半分が廃墟というとんでもない都会が現出した。映画の最後にペシミストの作家が出てきて、「世界の終りをローマで眺めたい」といっているが、気持はわかる、やはりローマは世界の臍だ。

しかしこれはたまらない映画、最初から最後までにやにや笑いがとまらない。よくもまあこんな人をくった映画を……これは「サテリコン」と同じスタッフで撮ったものらしいが、たしかにあの脂ぎったマチエール(?)には共通するものがある。汗と油で汚れたシャツを投げつけられるような変な快感があって、こういうのを見て喜んでいる人はたぶんマゾ気質の持主なんだと思う。

登場人物の一人が、「下水渠こそはローマの象徴ですよ」という。それでふとマラルメの詩句を思い出した。「地下に埋もれた神殿が、墓穴のような下水渠から汚泥とルビーを涎のように漏らしながら、火と燃える口に獰猛な唸り声を発するアヌビスの偶像のようなものを厭らしく吐き出している」というもの。アヌビスの偶像は出てこないが、似たようなものは随所に顔を出す。

最後に、地下鉄を作るための掘削機(?)がどう見てもファリック・シンボリズムなのには笑ってしまった。この機械、ぶきみに頭をもたげて壁をぶっこ抜き、その向う側にあった古代遺跡を台無しにしてしまう。石原慎太郎に見せたら大喜びしそうなシーンだと思った。