「からっ風野郎」


1960年の大映映画(増村保造監督)。怪優(?)三島由紀夫の魅力が炸裂! といいたいところだが、じっさいは危なっかしくて正視できたものではない。なんだって彼はこんな悪趣味な映画に出たのだろうか。みずから志願したのか、あるいは製作者の依頼をうけたのか?

いずれにせよ、この映画での三島はどうみてもまともではない。そこが演技だといえばそうなのかもしれないが、しかし恋人をなぐるシーンなどは、目が完全にいってしまっている。おまけにその体格や動作が尋常ではなく、こういう人にアクションをやらせるのは無理がありすぎる。当時の人はこの映画をみてどう思ったのだろうか。口に出していわなくても、「あいたたた……」と思った人が大半ではないか。

どうせならヤクザ映画ではなくて、江戸川乱歩の「陰獣」でもやってほしかった。ああいう作品なら、三島のぬめぬめした変態性がうまく生かされたのではないか。といっても、文壇の雄(といってもこのころはまだ35歳くらいだが)が陰獣役では周囲が、いや本人が承知しなかったかもしれない。

彼が出演した映画はほかにもまだあるようだが、私はこれ一本でお腹いっぱいです。