「世にも怪奇な物語」

sbiaco2007-09-03



とくに感想を書くつもりもなかったが、前回の記事があまりにめちゃくちゃだったので、少しだけ補足しておく。

この映画、あらためて見るとやはり古くさい。それはとくにファッションにおいて顕著だ。この古くささは60年代、70年代の映画に特有のもので、それ以前や以後のものにはあまり感じない。名作といわれる「2001年宇宙の旅」なんかもいま見るとどうだろうか。意外にダサくて辟易するのではないか。

ところで今回DVDで見てちょっと驚いたのは、映像があまりにも鮮明で、トーンも全体的に明るくなっていることだ。そのこと自体はもちろん文句をつけるべきことではないけれども、この手の映画でトーンが明るすぎるのはどうなんだろう。なんだか作り物っぽさがいっそう強調されるような気がする。このDVDにはオリジナルの(?)予告編も入っているが、そのラフな映像に逆に映画らしいリアルさを感じてしまった。

さて、前回の記事で思いきり持ち上げたフェリーニ篇。これが今回見ると意外につまらなかった。冒頭の飛行場のシーンからして魔力がすっかり消えてなくなっている。いや、冒頭だけではなくて、全篇気の抜けたビールのようだ。これまた一種の「秋山図」効果だろうか。とにもかくにもこの映画から魔力が抜け落ちたらあとはなにも残らない。フェリーニの魅力というのはじつは表層的なもので、もともと深みなんていうものはなかったのではないか? そんな疑問がふと浮かんだ。

それに反して意外によかったのは第一話の「黒馬の嘶く館」(ロジェ・ヴァディム)。話もいちばんまとまっているし、ゆれうごく女心をみごとに演じきったジェーン・フォンダの熱演にも拍手をおくりたい。それにしてもこの映画、監督の趣味かどうかは知らないが、ほとんど全篇ジェーン・フォンダのコスプレ大会の観がある。よくもまあこれだけ趣向の違う服を次から次へと着せ替えるものだ。むかし見たときにはそんなことにはいっこうに気づかなかったが……

少しだけ書くつもりがつい長くなった。前回の記事でフェリーニ篇について「カフカ的」と書いたのはちょっと保留にしておきたい。いや、ほんとは保留どころか前言撤回したいくらいだ。われながらピントはずれもはなはだしいと思う。