「巨人ゴーレム」

sbiaco2007-01-29



パウル・ヴェゲナー監督のサイレント映画(1920年、WHDジャパン)。これは前に一度ビデオで見たことがあるけれども、アマゾンで500円で売っていたので思わず買ってしまった。同時に購入したのは「カリガリ博士」と「吸血鬼ノスフェラトゥ」。500円ということで、パッケージなどはひどく安っぽいが、中身はちゃんとしている。ただ、字幕がちょっといい加減というか、あまり信用できないようだ。まあ、同時に英語の字幕も出るから、どっちか通りのいいほうを選べばいい。

さてこの映画、前に見たことがあるにもかかわらず、大筋から細部にいたるまで、ことごとく忘れていた。しかし、記憶にも残らないようなつまらない映画かといえばけっしてそんなことはない。じっさい、今回見なおして、「ゴーレム」とはこれほど優れた作品だったのか、と意外な気がしたくらいだ。

まず目を奪われるのが、ゲットーのセットのすばらしさだ。フーゴー・シュタイナー=プラークの絵に勝るとも劣らない。いや、この映画を見たあとではシュタイナーの絵も色あせてみえる。もっとも、シュタイナーが描くのは現代の(といっても100年前だが)疎外感ただようプラハだが、映画のほうは十七世紀の封建時代のプラハを描いているわけだから、両者は別物と考えたほうがよさそうだ。いずれにせよ、このセットのすばらしさだけでも一見の価値はある。

ゴーレムがまたすばらしい。これほど魅力のあるモンスターだとは思ってもみなかった。どうもドラキュラその他とくらべて外見的にいまひとつぱっとしない印象があったが、怪物ならではのイノセンスと、それゆえの悲しみのようなものが、あのダサい外見のうちにみごとに表現されている。ゴーレムが地震(?)で落ちてくる宮殿の天井をささえるシーンと、ラストで子供を抱き上げるシーンには、思わず胸をつかれるようなパセティックなおもむきがある。

それにしても、こういうものを500円で出した販売会社はえらい。ネットでみると、大阪にある小さい会社のようだ。すぐにつぶれそうなのが心配だが、エールを送る意味でも、あと何点か買ってもいいという気になっている。