「テンプルちゃんの小公女」

sbiaco2007-12-02



シャーリー・テンプルの名前は前から知っていたが、じっさいに見るのは今回がはじめてだ。1939年のアメリカ映画で、監督はウォルター・ラング

舞台は十九世紀末のイギリスだが、テイストは完全にアメリカのもので、家族みんなで楽しめるような娯楽映画に仕上がっている。主演のテンプルは演技はもとより歌も踊りもうまい。アメリカではこの三つが揃っていないとスター(というかエンターテイナー)にはなれないんだな、と思った。

テンプルちゃんがかわいいかどうかは見る人による。私はかわいいと思ったが、このかわいさは子犬のそれに近い。彼女自身がむくむくしていて表情やしぐさが子犬っぽいということもある。しかしそれだけでなく、この映画そのものが一種の忠犬物語ふうで、一途に父親を追い求める姿があのビクター(HMV)の犬やハチ公にダブってみえるのだ。そういうことがあるからこそ、最後の父親との再会シーンがいっそう感動的に迫ってくるのではないだろうか。

古い映画にもかかわらずフルカラーだし、時代設定を過去にしてあるためか、いま見てもまったく古びていないし、アメリカのやることはすごいなあ、と思ってしまった。

ところで、この映画ではなぜかボーア戦争が背景になっている。それもけっして否定的にではなく扱われている。1939年という製作の時期を考えるとちょっと興味をそそられるが、あまり深読みする必要はないのかもしれない。ただ、ボーア戦争がその後のアメリカの戦争のやり方にひとつのモデルを与えたのではないか、という気はする。