千野帽子「世界小娘文学全集──文芸ガーリッシュ 舶来篇」


先日読んでいたく感心したフランシス・ジャムの「三人の少女」が取り上げられているというので買ってみた(河出書房新社、2009年)。だれだかわからない少女に宛てて書かれた手紙の集録という体裁をとっている。全体は十章に分けられていて、それぞれのテーマに即した作品が選ばれている。私の知らない作品がほとんどなので、あとで書き写して今後のために役立てようと思う。

さて、かなり前に「少女愛文学」というのでリストを作ったことがある(→リストマニア──少女愛文学 - 両世界日誌)。あれをいまだに全部読めていないのは自分の怠慢だが、まあ手に入りにくい本があったり、読んでも興がのらなかったりするのもあって、ちょっと暗礁に乗り上げた格好になっている。じつは今回この本を買ったのも、そういう停滞気味の読書に活を入れてほしい、という気持もあった。

この本には、各章の終りにエッセイがひとつずつ入っていて、ガーリッシュ文学への手引きになっている。ほんとうはこっちを熟読して、オリエンテーションを得るのが正しいのかもしれないが、私はざっと読み飛ばしてしまった。というのも、ここに書かれていることはオリエンテーションの正反対、むしろ広漠たる大海へ自分の感性(それが羅針盤)だけをたよりに船出しろ、といっているに等しいように思われたから。そうだ、私も自分の羅針盤を信じて、著者のリストを海図にして大海へ乗り出すほかはない、たとえそれがいかに偏向のきつい羅針盤だったしても。

最後に、自分がこの本を手に取るきっかけになったジャムの本についていえば、千野帽子さんはこの物語集の最初の「クララ・デレブーズ」だけを紹介しているが、ほんとにおもしろいのはむしろあとの二つ、「アルマイード・デトルモン」と「ポム・ダニス」である。とくに「ポム・ダニス」は愛を断念して尼さんになる少女の物語で、ジッドの「狭き門」と似たようなテーマを扱いながらも、もっと素朴で鄙びた味わいがある。この二篇を読んでから、もう一度「クララ・デレブーズ」に戻って読むと、ジャム特有の自然描写の豊饒さ(初読のさいにはむしろわずらわしく感じられる)がよくわかって楽しめると思う。

というわけで、以下は本書のリスト。例によって書誌情報はすべて省略した。知りたい人はコメント欄で連絡してください。

I.をさなごゝろが終わるとき

II.セレブリティ・コンプレックス

III.夏は必ず行ってしまう

IV.結婚の毒と蜜

V.綺想ガーリッシュ

VI.暴力と背徳と

VII.セクシュアリティを横切って

VIII.スクールガール大暴走

IX.ロマンスと反ロマンス

X.夢見られたお嬢さんたち