名作の皮をかぶった駄作十選
昼間車を運転しながら、ふと思い浮かんだのは、名作のふりをしながらそのじつとんでもない駄作がある、ということだった。読んだあとで「金と時間を返せ」と叫びたくなるような作品のことだ。はてなの名作十選もそろそろ落ちついてきたようだし、ここを定期的に見ている人はたぶん10人くらいしかいないので、私的怨恨をぶちまけてもそんなに害はないだろう。そう思って公開してみる。
- ゲーテ「若きウェルテルの悩み」
情熱恋愛というには情熱が足りず、悲劇というには悲壮感に欠ける。そもそもなんで主人公が自殺しなければならないのかよくわからなかった。不満度★★★★
- アナトール・フランス「神々は渇く」
出来のわるい映画のような小説。フランス革命で流された血の何千万分の一かでもこの小説にあれば、と思う。翻訳(岩波文庫)がまた最悪。不満度★★★★
おもしろいのは初めのほうだけ。あとはくだらない姦通物語。冒頭の「われわれ」の射程から離れれば離れるほどつまらなくなる。不満度★★★
はじめからしまいまでバカにされているような気がした。不満度★★★★★
- ジッド「狭き門」
めいめいが遠慮ばかりしていると、みんなが不幸になるよ、というお話。不満度★★★★
- 夏目漱石「こころ」
漱石のいちばんダメなところが全開になっているのでは? 不満度★★★
- 森鴎外「青年」
これを読むと、鴎外がいかに嫌味な人間だったかがよくわかる。この青臭さには鼻をつまんで逃げ出すしかない。不満度★★★★
- ストリンドベリ「島の農民」
名だたる狂人作家が、いっとき精神の平衡を得たときに書かれたと思われる作品。正常になった狂人は凡人以下であることを証明している。不満度★★★★★
- ドストエフスキー「悪霊」
長すぎる。スタヴローギンの告白を中心にして構成しなおせば、200ページくらいにおさまるはず。不満度★★★
- スティヴンソン「二つの薔薇(黒い矢)」
道具立てはすばらしい。ただそれが小説としてまったく生かされていない。退屈きわまる冒険小説。不満度★★★★