オルコット「若草物語」(上)


少女愛文学の四冊目(吉田勝江訳、角川文庫)。

これはすばらしい。同じく家庭小説といっても、前に読んだ「少女レベッカ」よりは格段にすぐれている。親が子にすすめたくなる小説の筆頭ではないだろうか。私も子供のころにこれを読んでいたら、と思う。そうすれば、メグが、ジョーが、ベスが、エーミーが、もっと身近な存在として感じられたかもしれない。そして彼女たちを永遠の友人のように思ったかもしれない。

この小説はリアリズム小説といわれているらしいが、私にとっては四人の少女は実在のものというよりシンボルかアレゴリーにみえる。シンボルやアレゴリーといえば干からびた形象みたいに思われるかもしれないが、それらはじつはイデアに達するための媒介として、それ自体がじゅうぶんに豊かなふくらみをもっている。そういうシンボル性をつよく打ち出したことがこの小説の価値を高めているのではないだろうか。

説明不足もいいところだが、今回はこのへんで。つづきは下巻を読んでから書くつもり。