「ディーリアス・フェスティバル」

sbiaco2007-12-16



「シナラ」が入っているというので聴いてみた(EMI EMINENCE, 1988)。これはEMIのいろんな録音から適当に選んだオムニバス盤で、指揮者だけでもマルコム・サージェント卿、ジョン・バルビロリ卿、フィリップ・レッジャー、メレディス・デヴィース、チャールズ・グローヴス、ジョージ・ウェルドンと多士済々だ。

とえらそうに書いたが、ほとんど私の知らない人ばかり。選曲は合唱曲、管弦楽曲、歌曲、オペラからの抜粋など。解説によれば、世界初録音が二つ含まれているらしい*1

一曲目はホイットマンの詩を合唱曲に仕立てたもの(「別れの歌」)で、まずこれでまいってしまった。ほとんど宗教曲かと思うような壮大な仕上り。ホイットマンの詩をこういう合唱でやるというアイデアがまずすごい。といっても、歌詞はほとんど聴き取り不能だが。

お目当ての「シナラ」は、思っていたよりずっと明るい感じだ。陰々滅々としたところはまったくない。微妙な半音階と、めまぐるしく変る調性とを駆使した曲で、聴いているとバーン・ジョーンズやコンスタブルの水彩画を見ているような気分になってくる。ひとことでいえばラファエル前派的な作品。

ラファエル前派的なものを背景にした曲としては、ドビュッシーの「祝福された乙女」(D.G.ロセッティ詩)などがあるけれども、ドビュッシーになくてディーリアスに顕著なのが、春風駘蕩たる牧歌の要素だ*2。「シナラ」と牧歌とではおよそ水に油のようだが、ディーリアスはこのあたりをうまく処理して、一幅の絵のような作品に仕上げている。

そのほかの管弦楽も私の好みによく合っていて、これは久々の「当り」ではないかと思う。彼のオペラでは「村のロメオとユリア」がいちばん好評を博したものらしい。いつになるかわからないが、いずれぜひ聴いてみたい。

*1:「別れの歌」と「シナラ」

*2:ちなみに、こういった牧歌的な要素はフィンジの作品なんかにも感じられるもので、イギリス近代の作曲家のひとつの性格になっているのではないかと思う