「悪霊」(二)


二冊目読了。退屈な小説という印象はあいかわらずだ。ふつうの小説なら、物語は線的に展開するものだが、この本はそういう気配がいっこうになく、時間軸にそって展開するというよりは、空間軸のなかで徐々に膨らんでいくような感じがする。物語は膨らんでいく。しかし、いっこうに進展しない。

この小説のもうひとつの特色は、主人公がいないことだ(いままでのところ)。なるほどスタヴローギンという人物がいることはいる。しかし、彼が物語の中心に居座っているわけではない。この膨らんでいく物語の中心には、なにかもっと別なものが蟠踞しているようなあんばいなのだ。この不在の中心、あるいは中心の不在が、かろうじて小説世界の崩壊を防ぎとめる求心力の役割をはたしている。

というわけで、このとほうもない遠心力(その主なものは社交界のゴシップだ)に振り回されて膨張していく物語が、最後にどんなことになるか、いまとなってはその興味だけで読みつづけているといってもいい。ほかのひとがこの小説をどんなふうに読んでいるのか知りたいものだ。