少女時代との出会いと別れ


ネットで遊んでいると、ときどき思いがけないものに出くわす。数日前だが、リンクをたどっていたらメキシコの虐殺動画が出てきてびびった。こういうものまで今ではふつうにネットに上っているのか……非常によろしくない、と思う一方で、文章だけでは伝わらない人間の残虐性が生のかたちで捉えられているのにある種の感銘を受ける。昔の暴動(サッコ・ディ・ローマとか聖バルテルミーの虐殺とか)も、文や絵でわれわれが知っている以上に酸鼻をきわめたものだったに違いない。歴史の教科書などで「○○の乱」の一字ですまされているもののうちに、いかに多くの血が流れていることか、と考えてくると、人間のやっていることの変らなさ、愚かしさに気が滅入ってくる。

さて、きょうもやはりリンクをたどっていてこういう動画を見つけた。

曲はいわずと知れたアバの名曲だが、こういうふうに歌われるとオリジナルとはまた違った魅力が感じられる、それに後半の Genie という曲もわるくない、いや、非常によい。

こんなグループがあったのか、という驚きの気持で、少女時代について二時間ほど調べてみた。そういうことをさせるだけの力が上記の動画にはあった。しかし、この二時間で少女時代についてはだいぶ詳しくなったが、同時に急速に熱のさめていくのも感じた。そのきっかけになったのは、Genie 盗作疑惑である。

たしかに他の楽曲の一部を流用するとか、あるいは曲想やアイデアをいただくとか、そういうのはポピュラー音楽界にあっては日常茶飯事であろう。しかし一曲まるごとパクってきて、それを自分たちのオリジナルであるかのようにクレジットするというのは、なんぼなんでもやりすぎではないか。過去にそういうことが行われていたことは私も知っている。しかし、情報の限られていた60年代、70年代ならいざ知らず、このネット時代にそういうことをやったらすぐにバレる。それにもかかわらずそういうことを平気でやってしまう韓国の音楽産業のあり方に、なんともいえない前時代的なものを感じてしまった。

そういうところから生み出されてくるものは、一見どれほど輝いてみえようとも、しょせんはニセモノである。ニセモノに付き合っている暇はない、というわけで、わずか二時間ばかりで私と少女時代との幸福な関係は終止符を打ってしまったのである。