フェラーラ・アンサンブル「パヴィアの甘美なる城館にて」

sbiaco2009-02-07



1998年に仏ハルモニア・ムンディから出たCD(原題:En doulz chastel de Pavie)。副題に「1400年前後のヴィスコンティ家の宮廷における歌曲集」とあるように、なんらかのかたちでヴィスコンティ家と関わりのあった芸術家の曲があつめられている。おもな作者はフィリッポ・デ・カゼルタ、ヨハネス・チコーニア、ジャコブ・サンルシュなど、いわゆるアルス・スブティリオルの常連たち。

当時のヴィスコンティ家の当主はジャンガレアッツォで、ミラノ公として勢力を伸ばす一方、さまざまな芸術家のパトロンとしても活躍したらしい。このCDは、そんな彼が一日パヴィアの別荘に楽人たちを招いて催した音楽会のありさまを彷彿させるものになっている。その点ではウエルガス・アンサンブルの「フェビュスよ進め」とよく似ているといえるかもしれない。

「フェビュスよ進め」がアルス・スブティリオルのフランス的な面を示しているとすれば、こちらはそのイタリア的な面を示している。とはいうものの、両者をはっきり区別するのはむつかしい。というのも、当時の音楽家たちはフランスとイタリアの宮廷を股にかけて活動した人々が多かったから。あえていうなら、フランスのものが「壮麗」といった印象をあたえるのに対し、イタリアのものは「荘重」といった印象をあたえる。荘重といってわるければ、どこかくすんだような、銀ねず色の物悲しさをたたえている、といえばいいか。

そういった感じがよくあらわれているサンルシュの曲「旋律のハープ」がyou tubeにアップされているので、興味のある方は聴いてみてください。リンクはこちら→La Harpe de melodie - Jacob de Senleches - Ars subtilior - YouTube

とりあえずこのCDをもって私のアルス・スブティリオル探求はひとまず打ち止めとしたい。


(追記、2/11)
もし上記のサンルシュの曲を聴いて「もっと聴きたい」と思われる方がいたら、このCDを買う前に(なにしろ入手困難なので)、下記のものを試しに聴いてみることをおすすめする。

amazon:センチュリー・エディションvol.7

このオムニバス盤では、「旋律のハープ」を含めて4曲がフェラーラ・アンサンブルの演奏で聴ける。とくに1曲目の「ド・マ・ドゥルール」(フィリッポ・デ・カゼルタ)は圧倒的な名演。

なお、このCDについては前に感想を書いたが、いま見るとほとんど参考にならないように思う。