エリー・アメリンク「クリスマスソング集」

sbiaco2008-12-26



クリスマスもすぎてしまったが、今年はどうもクリスマス気分が高まらなかった。巷でもあまりクリスマスソングを耳にしなかったような気がする。いま日本でポピュラーなクリスマスソングは何曲くらいあるのだろうか。ざっと50曲はあるような気がするが、そのなかでも私のいちばん好きなのがリロイ・アンダーソンの「そりすべり」。どうアレンジしてもサマになってしまうクリスマスソングの定番だ。

さてこのアメリンクのCD(1977年、EMI原盤、2000年、Joan Records)。ヨーロッパ各国から民謡的なクリスマスソングを集めてある。といっても、なにも知らされずにこのCDを聴いてこれがクリスマスソング集だとわかる日本人がどれだけいるかは疑問だ。少なくとも私の耳にはたんなる民謡集のようにしかきこえなかった。それはとくにスペインものに顕著で、まるで舞曲のように軽快なものが集められている。

このCDについてはフランツさんのところ(→エリー・アーメリングのクリスマス・ソング集: Taubenpost~歌曲雑感)に委曲をつくした解説がある。私もこの記事を何度も読みながらCDを聴いていた。こういう資料的にも価値の高いものがネットで読めるのはありがたい。どうせブログをやるなら私もこういうものを目指したいが、それは自分の能力をはるかに超えているので、残念ながら諦めざるをえない。

このCDをしめくくるのはドビュッシーの「家なき子らのクリスマス」とラヴェルの「おもちゃのクリスマス」。ドビュッシーのものはEMIの全集に同じ演奏者の別テイクがある。録音時期もほぼ同じだと思われるが、それでも表情がかなり違っているのがおもしろい。全集盤のは意識して(?)少年の声をまねているようなところがあって、それが私には非常にかわいらしくきこえる。今回のCDではわりとたんたんと歌っているようで、リラックスしたレコーディングだったことを物語っているかのようだ。

ラヴェルの曲はといえば、最初の伴奏の部分を聴いただけでクリスマス気分などは吹き飛んでしまう。そして聴き手をたちまちフランス印象派の世界へといざなう。ああ、やっぱりおれにとってファミリアーなのはクリスマスではなくてこっちのほうだな、とへんに納得してしまった。"La, tout n'est qu'ordre et beaute, luxe, calme et volupte"という詩句はこういった曲のためにあるような気がする。