ゴードン・ベック・カルテット「エクスペリメンツ・ウィズ・ポップス」

sbiaco2008-12-02



たまに再燃するブリティッシュ・ジャズ熱に浮かされて買ったもの(原盤メジャーマイナー、1967年。デジタル・リマスター盤Art of Life Records、2000年)。

題名にポップスとあるからといってナメてはいけない。これはポップスの皮をかぶった(?)超硬派のジャズである。たんにポップスを素材にしてジャズふうにまとめました、といったような軟弱なものではなく、原曲を尊重しながらも、メロディックにもハーモニックにもリズミックにも別次元へと突き抜けた演奏を展開している。録音がまたすばらしくいい。デジタル・リマスターのせいかどうか知らないけれども、まるで楽器がそこで鳴っているかのような生々しさだ。これは買ってよかったと思う。

ライナーによると、このアルバムをもってヨーロッパ・ジャズはそのアイデンティティを確立した、というようなことが書いてある。まあそれはいいすぎだとしても、この録音に参加したメンバーと彼らのその後を見れば、その評もあながち過褒だとはいえない。ピアノのゴードン・ベックはさておくとしても、ギターのマクラフリンはあのマイルスのエレクトリック化に一役買ったほどの人だし、ベースのジェフ・クラインは英国のマイルスことイアン・カーのニュークリアスで変態的かつ堅実な演奏をしていた人、ドラムのトニー・オクスレーは「白いトニー・ウィリアムス」の異名をとった超テクニシャンである。すぐれた人材が集まったからといってすぐれた作品ができるとは限らないのがジャズの皮肉なところだが、今回買ったCDに関してはまったく問題なく、各自がじゅうぶんにその持ち味を発揮していると思う。

とにかくこのパーソネルを見てなにか引っかかるものを感じた人は買っておいて損はない。そのことは私が保証する*1

あと、ここに収められたポップスの題名を列挙しておく。原曲はyou tubeで手軽に確認することができるから、ついでにリンクも張っておこう。

1.THESE BOOTS ARE MADE FOR WALKING
2.NORWEGIAN WOOD
3.SUNNY
4.UP, UP AND AWAY
5.MICHELLE
6.I CAN SEE FOR MILES
7.GOOD VIBRATIONS
8.MONDAY, MONDAY

*1:と断言できるほどたいした保証人ではないけれども