レ・ジーン・シンガーズのアルバム3枚

sbiaco2008-05-25



今回手に入れたのは次の3枚。

"60 French Girls Can't Be Wrong!"
"60 French Girls Can't Be Wrong!, vol.2"
"60 French Girls"

発売元はいずれもABC PARAMOUNTで、発売年は不明(いわゆるs.d.)。

3枚もいっぺんに手に入れて、聴くのが大変ではないか、と思ったが、CDに慣れたものにとって、LPは拍子抜けするくらい録音時間が短い。「あれ、もう終り?」みたいな感じで、まったく退屈することなく3枚聴きとおせた。

それで思うのだが、CDの録音時間はどう考えても長すぎる。最近のものでだいたい60分から70分くらい。これはLPでいえば2枚組に相当する長さだ。通して聴くには2、3回休みを入れるのが適当だろう。もっとも、CDというものは、もともと「通して聴く」ためには作られていないのかもしれないが。

それはともかくとして、今回聴いたレ・ジーン・シンガーズだが、ネットで調べてみても、あまり情報は得られないようだ。そこで、ジャケット裏のライナー・ノーツを参考にしていちおうまとめてみると──

  • レ・ジーン・シンガーズ(Les Djinns Singers)は、十三歳から十八歳までの少女60人からなるコーラス・グループで、伴奏にあたるのは40人編成のオーケストラ(Le Grande Orchestre de Paris)、指揮および編曲はポール・ボノー(Paul Bonneau)が担当している。
  • 1959年、ラジオ・テレビ産業にすぐれた人材を供給すべく、フランス政府はマスター・スクールなる養成機関を設立し、少女たちに音楽的な訓練をほどこすことにした。少女たちの選抜は小学校で行われ、先生たちが審査にあたって音楽的な才能のゆたかな子供が選ばれた。9歳で選ばれた子もいる。
  • 少女たちは親御さんの承諾を得てこの学校に入り、午前中は通常の勉強をし、午後はもっぱら音楽的なトレーニングをうける。コース終了後はただちにレ・ジーン・シンガーズのメンバーとなり、18歳まで在籍する。その後は後任と入れ替わる。
  • 1960年、レ・ジーンの1枚目のアルバムが出て、フランスのレコード・アカデミー賞のグランプリを獲得した。以来、1966年までに通算8枚のアルバムをリリースする(アメリカではすべてABC PARAMOUNTより発売)。
  • フランスではコンサート活動にも力をいれている。ヨーロッパ・ツアーの実績もある。アメリカ公演も久しく待望されているが、メンバーが子供なので実現にはいたっていない。アメリカではフランスで製作された短いビデオがテレビで二回放映されたのみ。

ざっとこんなところ。ライナーの記事を総合すると、今回買ったvol.1がどうやらデビュー作のようで、"60 French Girls"は67年(?)に出た9枚目ということになるようだ。

こういうグループ編成のせいかもしれないが、60年の1枚目と67年の9枚目とを比べても、本質的なところではなにも変らない。甘く切ないメロディを生気にみちた合唱で歌うという基本姿勢は一貫している。もしかしたら、このあまりの変らなさのせいで聴衆に飽きられて、やがてグループは消滅してしまったのかもしれない。

それでなくても、1968年という年は新旧交替の時期で、レ・ジーンのような古いタイプの音楽はだんだんと人気がなくなっていったのかもしれない。フランスではこのころブリジット・フォンテーヌがデビューして、それまでのシャンソン概念を根本的にくつがえすような音楽をはじめたのではなかったか。

とはいうものの、時代が一巡して、新奇なものがすでに古びてしまったいまでは、レ・ジーンのような「初めから古いもの」が新たに見なおされる可能性もないわけではない。この時期の作品には粗製濫造のものも少なくないが、すぐれたものについては、うまく宣伝すればCD化してもじゅうぶんに元はとれるのではないだろうか(もちろん、たいして儲かりはしないと思うが)。