マリオ・プラーツ「官能の庭」
前にドイツに注文していたのが到着(S.フィッシャー書店、1988年)。届いた本を見て、ちょっと意外な気がした。というのも、この本の邦訳(ありな書房)を前に本屋でみたときは、値段が高いこともあって、ずいぶん浩瀚な書物といった印象があったからだ。届いた本は270ページの瀟洒なもので、図版も必要最小限におさえられている。
まず全体をぱらぱらと眺めてから、さて最初から読もうとして、いきなりぜんぜん読めないのには驚いた。なんということだろう。ドイツ語感覚がすっかり脱け落ちてしまっている。なんとなくその感覚がつかめたような自覚が得られたので、ドイツ語の学習はいったん中断したのだが、どうやらまったくものになっていなかったようだ。
これではいけないと本腰をいれて読み始めた。
本腰をいれると、なんとなくだが要領がつかめてくる。まるきり不得要領というわけではない。しかし、少しでも気を抜くととたんに五里霧中になる。一進一退を繰り返しながらようやく2ページほど進んだ。先は長い。ともかくも加速をつけなくては話にならぬ。
プラーツの文体はけっして難解なものではないはずだが、訳者はイタリア語からドイツ語に移すときに故意にむつかしくしているのではないか。それとも、ドイツ語らしく訳すとこうなるのか。よくわからないけれども、英訳「ロマンティック・アゴニー」の読みやすい文体に慣れたものには、まったく別人が書いているような印象がある。
きょうはメモ代りに目次だけでも写しておこう。
I.ふたりの先駆者
- ヒエロニムス・ボッシュの「異象」
- 十五世紀のジョイス
II.マニエリスムのほうへ
- ずんぐりしたヴィーナス
- マニエリスムの奇怪な彫刻
- ボマルツォの怪物
III.バロック瞥見
IV.統一と多様、十七世紀芸術の宇宙
内容を知ってから見なおしたら噴飯物の誤訳もあるにちがいないが、とりあえずこれにて。