「カラマーゾフの兄弟」の次に読むべき本を


http://q.hatena.ne.jp/1189457598

なかなか興味深い回答が並んでいるが、さて自分ならなにをすすめるか、と考えると、適当なのがなくて困る。もっとはっきりいえば、私はひとに本をすすめるのが苦手なのだ。なにしろ、いままでひとに本をすすめて喜んでもらったためしがないのだから。そのことはこの日記にも書いたかもしれない。

そこでふと思い出すのは、私と弟との関係だ。弟は小さいころから私の好きになったものばかりを真似するように追っかけてきた。とくにすすめたわけでもないのに、ふしぎなくらい私の気に入るものは弟にも気に入るらしかった。そんな状態が4、5年もつづいただろうか。この時期ほど自分がメディアムとしての能力を発揮したことはない。

あのころ、いったい弟はどういう考えで私のあとを追っかけてきたのだろうか。それはわからないけれども、ひとついえることは、弟は私のあとを追っかけるというよりも、むしろ私から「盗んで」いたのではないか、ということだ。

そう、ひとからすすめられるのを待つよりも、むしろ積極的に盗むべきなのだ。さいわいにして、本はとくにだれの所有物というわけでもない。「おれの好きなこの作家のものをおまえが読むなんて許せない」とはだれにもいえないだろう。とにかくひとが読んでいるのを横でみながら盗むこと。それしか自分が豊かになる方法はない。

ところで、それとはべつに私がおもしろいと思ったのは、上のリンク先の下のほうにあるコメント欄。そこにはボルヘスの言葉としてこんなのが紹介されている。

「わたしはこれまで新しいものを読むよりも、むしろ再読しようと努めてきた。新しいものを読むよりも、何度も読み返すほうがわたしには大切なことに思われる──もっとも読み返すためには、一度読んでいなければならないが」

いかにもボルヘスらしい逆説だと思った。


(追記)
上に書いた盗み方の具体的なコツがここにうまく説明されている。興味のある方はどうぞ。