フッサール「イデーン」


発注したのが23日だから、5日ほどで到着したことになる。なんという早さ。さすがに送料が高いだけのことはある……のかな。そんなに急がなくてもいいのにね。アマゾンは海外向けに船便のオプションもつけるべきだと思う。

さて本書(マックス・ニーマイエル書店、2002年)だが、1922年の第二版をそのままファクシミリで印刷したもので、体裁は書物というよりたんなる印刷物といった感じだ。1922年といえば戦前なので、字体もあの「骨折」文字かといえばそうではなくて、わずかな違い(たとえば小文字のsが縦に延びてfにみえることなど)を除いて、ほぼ現行の字体と変りはない。これを見ていると、いわゆるエスツェットがβに似た一文字ではなくて、この縦長の小文字のsと、筆記体のzとを組み合わせたものであることがよくわかる。

さっそく任意のページを開いて邦訳と対照してみる。するとすぐにわかるのは、この邦訳がいかに読みにくいとはいえ、原文のき わ め て忠実な訳であることだ。あちこちに見られる奇異な訳語(術語)にしても、それなりの必然性があってこうなったんだと納得できてしまうようなところがある。「本質額」なんて「本質学」の誤りかと思ったがそうではなくて、das Wesensbestandの訳語なのだった。どうも自分は訳者の力量を不当に軽くみていたようだ。その点については手をあわせて謝りたいような気持になっている。

いずれにせよ、本書を邦訳と読み比べることで、ドイツ文の読み方に慣れることができるばかりでなく、フッサールの思考そのものになじむことができるのはありがたい。フッサールが生涯をかけて大切に育んだ現象学、それはいわば彼の愛娘のようなものだった。この本にはそんなフッサールツンデレぶりがいっぱい詰まっている。そういうところをゆっくりと味わってみたい。