オーランド・コンソート「教皇と対立教皇」

sbiaco2006-06-25



14世紀の教皇対立時代に、アヴィニョンとローマの宮廷のために書かれた歌曲をあつめたCD(原題:POPES AND ANTIPOPES、メトロノーム盤)。

しばらく前からアルス・スブティリオルを中心に、この時代のCDを聴いているが、おかげで知らずしらずのうちにカウンター・テノールに親しむことができた。もともと男声による女声の表現には非常な抵抗感があって、カウンター・テノールもずっと聴かずぎらいを押し通してきたけれども、いまではこの声種ならではの表現に愛着すら感じはじめている。

オーランド・コンソートは男性四人からなる合唱団。このCDも、一曲をのぞいてはすべてこの四人によるアカペラになっている。それが70分もつづくのだから、多少退屈でないこともない。ぼんやり聴いていたらどの曲もみな同じようにきこえてしまう。しかし、それでもべつにかまわない。中世音楽というのは作曲家の個性の音楽ではなく、流派の音楽だからだ。このCDには、デュファイ、チコーニア、ブラッサールといった、多少なりとも名の知れた作曲家の作品にまじって、無名氏のものも2曲はいっているが、それらの曲も他とくらべて劣っているというわけではなく、同じ流派に属するものとしてじゅうぶんに独立の存在を主張している。

さて、中世音楽の魅力のひとつに、独特の屈折するハーモニーがある。理論的にどうなっているのかはよくわからないけれども、このCDでもこのハーモニーがあちこちで聞かれる。てんでばらばらのメロディが屈折をへて解決にむかうところが聴いていていちばん気持がいい。アカペラの場合、この屈折の具合がいっそう強調されるようだ。

いずれにせよ、この手の音楽はクラシックの延長(あるいは源流)として聴いてもあまりピンとこないと思う。むしろ前衛ジャズやプログレ・ロック、あるいは民族音楽を聴くような耳で聴いたほうがいいのではないか。どうも感性としてはそっちのほうに近いような気がする。