パーセル「歌曲集/嘆きの歌」


パーセルはもちろんのこと、エマ・カークビーの歌を聴くのもはじめてだ(オワゾリール/ポリグラム、1982年録音)。CDの帯(たすき?)には「天使の歌声」と書いてある。さて、じっさいはどんなものか。

曲の性質にもよるのだろうが、天使というより妖精の歌声のようだ。天使と妖精とはどうちがうか。私見によれば、天使の声が聴き手をつつみこむようなあたたかさをもっているのに対し、妖精の声は聴き手に「見守ってあげたい」と思わせるような可憐さをもっていると思う。オペラでいえば、少年の役どころにぴったりの声だ。

さて、ここに聴かれるパーセルの歌曲は、ロマン派以降の多少なりともソフィスティケイテッドな歌曲になれた耳にはいかにも素朴に響く。装飾の多い旋律は、アルス・スブティリオルのそれのようだ。ただ、伴奏がアルス・スブティリオルのようなややこしいものではないので、そのぶん牧歌的な気分がストレートに伝わってくる。まさに妖精の国イギリスにふさわしい音楽だと思う。

難をいえば、伴奏の録音レベルが低くて、歌との音量面での差がはげしいことだ。とくにリュートなどは音が小さすぎて、せっかくの効果が半減してしまっている。