「牧神の午後」散文訳(その4)


残念だが仕方がない。あの至福の境地へは、ほかの女が連れていってくれるだろう、その編んだ髪をおれの額の角に結びつけて。しかし、わが情熱よ、おまえは知っている、どの柘榴もすでにまっ赤に熟れて、その笑み割れた実のまわりには、蜂がぶんぶんうなっていることを。そしておれたちの血潮は、それを吸い取ろうとするものに恋いこがれ、永遠の蜂の群れのような欲望のために流れ出すのだ。

森が西日をあびて金色や灰色に染まりだすころ、色の消えた葉の茂みでは祭の気分がたかまってくる。エトナよ、その祭が催されるのはおまえのところだ、悲しい眠りがとどろくとき、また炎が燃えつきるとき、美の神ヴィーナスが訪れて、あどけない踵で溶岩を踏みしめるという火山よ。

おれはその女王を抱きしめる!

ああ、なんと確実な懲罰だろう……

いや、そればかりか、からっぽになった言霊も、重く疲れたわが身も、ついには真昼の誇らしげな沈黙に打ち負かされてしまう。このまま、涜神の言葉も忘れ、渇をいやされないまま砂の上にねそべって、眠りこむのがいちばんだ。葡萄酒に効きめのあるあの星(=太陽)に向かってぽかんと口を開けているのはなんと気持がいいことか。

さよなら、つがいのニンフたち。おれは影となったおまえたち二人の姿を夢にみることにしよう。