「リラの花咲くころ〜ショーソン歌曲集」

sbiaco2006-03-25



ナタリー・シュトゥッツマン(コントラルト)とインゲル・ゼーデルグレン(ピアノ)とのコンビによる歌曲集(BMGジャパン)。ショーソンの歌曲では「愛と海の詩」が代表作とされているようだが、とりあえず小さい歌曲集から聴いてみることにした。歌曲の場合、大掛かりなチクルスよりも、小さい個々の作品の集録のほうが魅力的なことが多い。「蝶々」や「はちどり」のような曲がいっぱい聴ければそれで満足なのだ。

というわけで聴いてみたこのCD、まずシュトゥッツマンの声になじむのにだいぶ時間がかかる。コントラルトという声種がいわゆるアルトより高いのか低いのかよくわからないが、いずれにしろ明るく華やいだ声というより、しっとりした情念の表出に向いた声だろう。そして、そんなシュトゥッツマンの声に応じるかのように、ここに選ばれたショーソンの曲がまた重く沈みこむような曲調のものばかり。「蝶々」や「はちどり」系のものを期待していた私はすっかり面食らってしまった。

まあ、こういった暗い曲にもそれなりの魅力はある。このCDでいえば、メーテルランクの詩による連作歌曲「温室」がすばらしい。エヴラン・ルテールは「デュパルクはわたしたちにフォーレをおもわせた。そしてショーソンは、最初の歌曲からドビュッシーをおもわせる」と書いているが、「温室」などは、フォーレふうでもドビュッシーふうでもない、まさにショーソン独自の表現になっていると思われる。

それと、ショーソンの歌曲では、ピアノ伴奏が重要な位置を占めている。歌だけとってみればたいしておもしろくもないが、たえず転調を重ねつつそれを支えるピアノがあってはじめて歌曲としてのまとまりが生れる。つまり、ショーソンの歌曲は歌よりもピアノを重点的に聴いたほうが理解しやすいということだ。このCDでは、ゼーデルグレンのピアノが左右にステレオでふられて、シュトゥッツマンの歌を包みこむような録音になっているが、これはショーソンの歌曲にはじつに効果的なやり方だと思われた。