フーゴー・シュタイナー=プラーク「図録」

sbiaco2006-03-12



「ゴーレム」の挿絵がよかったので、彼の本を何冊か注文した。そのうちの一冊がこれだ。注文してから一週間ほどで到着。1976年から79年にかけてドイツ各地で行われた展覧会のときのもの。

海外の図録を取り寄せるのは初めてだが、体裁は日本のものとほとんど同じだ。ただ今回のものは図録としてもあまり満足できるものではない。紹介文がむやみに多くて、かんじんの図版が全体の三分の一くらいしかないのだ。それもカラーは表紙だけで、あとはすべてモノクロばかり。まあ、彼の場合、グラフィック・アートが多いので、べつにモノクロでもかまわないのだが。

全体をざっと眺めると、とても同一の画家が描いたとは思えないほど、その傾向がバラエティに富んでいる。およそ一定のスタイルというものがないのだ。このことは、つまりシュタイナー=プラークが骨の髄まで挿絵画家だったことを物語る。ひとつのスタイルにこだわっていては、種類の異なる本の挿絵を自在に描くことはできないからだ。そういう意味では、彼はやはり芸術家というよりは職人というべきだろう。

参考までに、彼が挿絵を描いた作家の主だったところをあげておく。レーナウ、アンデルセン、ホフマン、クライスト、ディケンズ、マイリンク、シュトローブル、グリルパルツァー、メリメ、ハイネ、ノディエ、ブレンターノ、ゲーテ、ゴビノー、ヘッベル、トルストイワーグナーホフマンスタールネルーダ、ラーベ、モリエール、メーリケ、シェークスピアバイロン、ポオなど。

しかし、そのなかでもとくに出色の出来ばえを示しているのが「ゴーレム」の挿絵だ。たぶん、彼は生涯これを越える挿絵を描くことはなかったのではないか。彼はプラハの生れで、若いころからユダヤ人街をうろついていたらしい。そういう下地がこの挿絵にはみごとに生かされている。ちなみに彼の本名はフーゴー・シュタイナーで、プラークというのは生れた町の名前をあとからくっつけたらしい。それほどプラハの町に愛着をもっていたわけだ。