ニュー・ロンドン・コンソート「アルス・スブティリオル」

sbiaco2006-03-11



アルス・スブティリオルの2枚目が届く(LINN)。前のプロジェクトPANのものよりもだいぶ聴きやすい。その理由の一つとして、こちらの演奏では歌が一人の歌手によって歌われていて、重唱曲がないということがあげられる。重唱ではどうしても対位法が強調されるが、歌手が一人の場合は他の声部が器楽伴奏に割り当てられるので、われわれにはおなじみの「歌と伴奏」の形式に落ちつくからだ。

こうして主旋律がきわだたされてみると、意外にも素朴なフォーク・ソングふうの音楽に聞こえてくる。いまの楽器(ギターやシンセ)を使って演奏すれば、ちょっと風変わりなポップ・ソングとして通用しそうなくらい現代的だ。こういう明朗な表現も、アルス・スブティリオルの一面なのである。

リコーダーの使用も、素朴な雰囲気をかもしだすのに大いに貢献しているだろう。古来笛というのは、弦楽器に象徴される調和をやぶる魔的な楽器とされているようだが、リコーダーに関してはそういう心配はない。リコーダーで表現される世界は裏表がなく、どこまでも肯定的だからだ。どうもリコーダーというと小学生の吹く楽器というふうに軽くあしらわれがちだが、もう一度見なおしてみてもいいと個人的には思っている。

いずれにせよ、ここに聴かれる音楽はいわゆるクラシック音楽とはほど遠い。これを聴きながら思ったのは、クラシック音楽の成立にはチェンバロやピアノといった鍵盤楽器の確立と発展とが不可欠の要素だったのではないか、ということだ。それはいいかえれば平均律の普及ということでもある。クラシックがバッハ以後に限定され、それ以前は「音楽史」という括りになっているいまのCDの分類にもちゃんと意味があったのだ。