ホフマン「室内楽集」
E.T.A.ホフマンの「室内楽集」(cpo)を聴く。
これは「ピアノ、ヴァイオリン、チェロのための三重奏曲」、「ソプラノとテノールのための6つのイタリア歌曲」、「ハープと弦のための五重奏曲」を収めたもの。ざっと聴いた印象では、最初のものがいちばんいい。これはいかにもホフマンらしい、ひどく落ち着きのない曲だ。ホフマンには「カロふうの幻想曲集」という短篇集があるが、それを音で表現してみせたような趣がある。
イタリア歌曲は、ソプラノの先導にテノールが応えるような構成のもので、これを聴いていると、どうしても「牡猫ムルの人生観」のなかのクライスラーとユリアの愛の二重唱を思い浮かべないわけにはいかない。じっさいホフマンはこのうちの一曲、「Ah che mi manca l'anima」を「牡猫ムル」で取りあげて、最上級の言葉で自画自賛(?)している。よくもまあぬけぬけと、と思うが、霊感に鼓舞されたホフマンの頭のなかではそういうものとして鳴り響いていたのだろう。
最後の五重奏曲は、ハープが入っていることを除いてはべつにどうというほどのこともない。ホフマンは弦楽四重奏にハープを加えることに固執していたようだが、ここで聴かれるハープのパートはピアノでも十分置き換えがきくのでは、と思ってしまう。ハープという楽器が当時どういう扱いをうけていたのかよく知らないが、あまり効果的な使い方をされていなかったのではないか。やはりハープを魅力的に響かせるには、フランス印象派をまたなければならなかったのかもしれない。