シャルロット・リゼスのこと

sbiaco2006-11-21



ユートピアの対話」に出てくる「とがりねずみ」ことリリ・ジョンキーユのモデルではないか、といわれているのがシャルロット・リゼスという女優だ。サッシャ・ギトリーの愛人で、どうやら親父のリュシアン・ギトリーとも関係があったらしい。そのせいか、サッシャがリゼスと同棲していることを知った親父のリュシアンはかんかんに怒って、息子を勘当同然の目にあわせたとのことだ。

リゼスがルネサンス座に出たときの写真がネット上にあったので、ちょっと拝借した。これでみると、どこが「とがりねずみ」なのかよくわからない。とがりねずみの写真はここで見ることができるが、ネズミというよりほとんどモグラみたいで可愛らしい。なるほど爪が長くて、顔が三角形をしている。

フランスの小説で、女性にこういう動物のあだながついている場合は、たいていその素性を疑ってもいい。有名なのはバルザックの小説に出てくる「しびれえい」だろう。これはいかにも触れたら感電しそうな名前だ。そういえば、「しびれふぐ」とかいう商品が昔売っていたような気がするが……

とにかく昔は女優や歌手といえば半分娼婦のようなものだった。ワーグナーとも交友があったというデフリエントには注目すべき回想録がある。そう考えれば、リリ・ジョンキーユの素性があやしいのもふしぎではない。「尊敬するにはあまりに彼女のことをよく知っている」という一句にはそういう含みがあるのではないか。